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諦めてドMの道に目覚めなさい2/4


 肩の咬み痣も足の擦り傷もすっかり治った。だけどそれだけサスケ君に会っていないのかと思うとどうにも寂しい。相変わらずどんよりとした気持ちで1日を過ごして、のろのろと帰り支度を進める。話し掛けづらいのか、友達はみんな遠巻きに手を振るだけで、声を掛けずに帰って行く。

 暗い溜息をもわっと吐いて、そろそろサスケ君は絶対にもう帰っているだろう、というタイミングを待って立ち上がった。そうして不意に廊下側の窓に目を向けると、目が合って、固まってしまった。

「……え、」
「…………」

 目が合ったのは、サスケ君と。いつもと変わらず不機嫌そうな顔で、じとりとこちらを見ている。明らかに、私を待っている様子の彼に、疑問に満たない困惑が湧き起こる。なぜ、どうして、なんで。そんな単純なはてなの言葉が頭の中を占める。数秒経ってびくりと肩を震わし、ようやく目を逸らす。だけどサスケ君がそこから動く気配はしない。

(逃げたい……逃げよう……!)

 ガタガタと机に太ももや鞄をぶつけながら、教室の後ろのドアに向かう。前のドアに近い位置に居たサスケ君が動くのも目の端に見えて、さらに慌てて足を進める。だけどドアを出る時に追い付かれて、ドアに掛けていた左腕をがっしと掴まれてしまった。

「っ、ヤ、」
「……逃げんな」

 元々低い声が、もう少し低い。少なくともよい気持ちではないことはそれでよく分かったから、逃げたい気持ちに拍車が掛かる。だけどしっかり掴まれているから、押しても引いても腕を解放できない。

「……取って食いやしねえよ。落ち着け」

 やっぱり低い声、だけど、調子は落ち着いている。それや、言葉に宥められるように、徐々に気持ちが落ち着いてくる。サスケ君はそれをじっくりと待って、その間私、ではなく少しずれて教室の中のどこかを見ている。何もしないし、何も言わない。前にも後ろにも動かないから、私はドアを塞いでしまったままだ。

「……」
「……帰んぞ」
「ぇ、!」

 私が少し落ち着いたのを見計らって、そのまま腕を引いて歩きだした。びっくりしてよたよたと数歩進んで、力が強いから引かれるまま付いていく。

 帰るって、本当に帰るだけ? それともこの前みたいに何か、やましい事考えてる? だけどそんなことは聞ける雰囲気ではなく、ただサスケ君の歩調に頑張って付いていくしかできない。





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