然し着物はお断り。





「お願いします!」



新年早々、一体この男はどうしたと言うのか。起き抜けで起動しきらない頭で処理はできないのだけど、目の前には土下座した佐助。と、なんかの包み。…着物…かな…?
取り敢えず、コーヒーだ。無視してのそりと起き上がれば、サッと目の前に差し出された、淹れたてのブラックコーヒー。…こいつ、いつの間に?と、思いつつも受け取り、ゆっくりと口をつける。暫く目の前で土下座を続ける佐助を見下ろしながらコーヒーを飲んでいれば、漸く思考がハッキリしてきた。こういう必死な佐助のお願いは大抵くだらなくて碌でもないことだ。着物を用意してきたことと、年明けと言う事を総じて考えるに、どうせ着物を着てヤらせろとかだろう。っていうか、それだ。



「だが、断る。」

「ちょっと待って!俺様まだ何にも言ってないよ!?」

「姫初めなら年明けた瞬間にしただろうが。」

「違うよ!いや、違わないけど!俺様は着物着たゆみちゃんとイイことしたいの!」



…やっぱ阿呆だコイツ。どんだけ下半身に忠実だ。頭の中そればっかりか。今更ながら、コイツは実は私の身体目当てじゃないかと思う程にそっちに持っていこうとばっかりして…



「違うからね?ゆみちゃんだからエッチしたいんだからね?他の子が同じ身体でも勃起しないよ!」

「ドヤ顔で朝っぱらから『勃起』とか言わないでくれる?潰したくなるから。」

「やだゆみちゃん!独占しなくても俺様のマグナムは対ゆみちゃん戦しか使用不可だよ!」



・・・この返事、この前一言一句違わんものを聞いたんだけど。私、本当になんでコレと付き合ってるんだろう?まあ、こんな分り辛くて扱い辛い私を理解して全部受け入れてくれる奇特な男だからなんだろうけど。さっきも、何気に私の心中察してたし。阿呆だけど。



「本当に残念だね、佐助は。」

「あれ?なんでそんな結論になったの?」

「結論も何も真理だよ。」



きょとんとした佐助の頭をポンと叩き、すっかり冷めてしまったコーヒーを佐助に託して部屋を出る。



「、待ってゆみちゃん!お願い、」



追いかけてきた佐助に脱ぎ捨てようとしたシャツを被せて顔を寄せる。いつもは周りも憐みの目を向ける程に下ネタ前回の佐助だけど、不意を突かれると赤面したりするのだ。全く、意外性を持った可愛い男だことで。



「シャワー浴びてくるから大人しく待ってられる?」



聞けばもげそうな程に首を振るから、ふはりと笑いがこぼれてしまった。全く、本当にお馬鹿で可愛い狼である。



然し着物はお断り。



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