きみの瞳に恋してる





「お前のその目は厄介だな…」



急に難しい顔で現れた真田の言葉に、思わず首を傾げてしまう。私の、目…?何が厄介だと言うのだろうか?え、私、もしかして自覚なかったんだけど目つき悪い…の…?
若干気落ちしながら、真田の言葉の真意を伺うために、ジッ…と真田の目を覗き込む。あれ、真田ってよく見ると 意外と優しい目許してるかも…いつもほら、あの、髪がワカ…個性的な後輩君を筆頭に怒鳴ってばかりだから気付かなかったな。あ、眉尻にちっちゃい傷がある。真田はきっと眉を整えたりはしなさそうだから、多分テニスか居合で出来たんだろうな。
まじまじと観察していると、真田の眉間にグッと皺が寄る。え、何で急に…はっ!そうだ。私、恐らく目つき悪いんだった。つまるところ、真田は私にメンチきられたと思ったに違いない。



「ち、違うんだよ真田。」

「…何がだ?」

「あ、あのね、私、ただ人間観察が好きなだけで、確かに直ぐ凝視しちゃう癖はあるけど、悪意はなくてだね?あの、えっと…」



急に慌て出した私に真田は怪訝な顔をしたが、私が弁解を始めた途端、どんどんその表情が険しさを増す。おかしい、何が地雷だった?今の弁解の何がそんなに真田を怒らせたの?言葉使いが乱れてるとかだったらもう何にも言えない。おろおろと、無意味に手をうろつかせていれば、急に真田に強く両肩を掴まれた。
これ、鉄拳制裁フラグですよね分かります私オワタ!ああ、昨日見たあのワカ…個性的ヘアーな後輩君の様に私は空を飛ぶんでしょうかお母さん。どうせなら楽しい気分で気持ち良く飛びたかったですお父さん。
ギュ…っときつく目を瞑って私の頬を襲うだろう衝撃を待つこと数十秒…来ない。え、まさかの焦らしプレイ?真田、どこでそんな高度なプレイを覚えてきたの?幸村君?幸村君に仕込まれたの?



「………んわぁ?!」



そろそろと薄目を開けて真田を伺えば、真田が真剣な表情で至近距離に居て、間抜けな悲鳴が零れた。え、ちょ、近っ!何?ビビった間抜けな顔を至近距離で鑑賞なの?それも幸村君に仕込まれたプレイなの?やだ、神の子の調教スキルが真田を大人にしてしまっている…!



「…許さん。」

「…え?」

「他を見るな。」



ハイキタコレ私の目つきは完全に終わっている宣言です。悲しい。目から味噌汁でも流れそうだ。前髪伸ばして伊達眼鏡でもかけようかと落ち込んで項垂れれば、ガッ…と両手で頭を掴まれて真田の方を見上げさせられた。やべぇよ超怖いんだけど本気で目から味噌汁出ちゃう…!若干涙目の情けない顔で真田を見上げれば、真田の親指が私の目尻をゆるりと撫でた。



「いいか。他の人間なんぞ観察する必要はない。見るなら、俺を見ていればいい。」

「………うん?」

「勘違いするのは俺だけでいい。この目は俺だけのものだ。」



するり、
柔らかく瞼を撫でられて、その気持ち良さに思わず強張っていた身体から力が抜ける。なんだかよくわからないが、真田は私に鉄拳制裁を加える気はないようだ。なら、まぁ、いっか…。なんで真田がそんな怒ったような、でも優しい顔をしているのかは分からないけど、今は瞼を撫でる指が気持ちいいのでそれに身を委ねることにしようではないか。



きみの瞳に恋してる



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