02





朝の6時30分。
剣道部の朝練があるからって、幸村は私を迎えにくる時間。

本当なら、3年の私達は引退してるはずだけど、大学受験は私達には関係無い。
自慢じゃないが、私は頭も良いし剣道も強いから推薦で決まっている。
幸村も、頭はそれほど宜しくはないが剣道は死ぬほど強いから同じく推薦で決まっている。

つまり、剣道馬鹿な私たちは、暢気に今も出しゃばり続けているのだ。

でも、そんな剣道馬鹿な私でも、今日は行きたくなかった。

当然だ。
何が嬉しくて昨日失恋したばかりの奴の顔を朝一で見なきゃいけないんだ。
生憎、私はそこまで酔狂じゃない。

なのに、だ。



「塙音!朝練に行くぞ!」

「塙音先輩、お早うございます。」



一体、何の拷問だろう?
私、そんなに神様に嫌われてるのだろうか?
失恋相手どころか、その彼女まで見なきゃいけないなんて。

さいあくだ。
それに、幸村の彼女…剣道部のマネージャーの波瑠ちゃんだ。

益々、行きたくなくなったな…



「…二人で先に行きなよ。私は今日は朝練行かないから。」

「何故だ?」

「カレカノと一緒にとか、あり得ないじゃん。
邪魔とか、したくないし…」

「何故、塙音が邪魔になるのだ?
いつも、共に行っていただろう?」



…何で分かんないんだろう?

普通さ、誘わないでしょ?
付き合い始めって、二人きりで居たいものじゃないの?
まぁ、幸村にこんなこと言っても無駄かもしれないけど。

波瑠ちゃんもさ、嫌がりなよ。

人の気も知らないでにこにこしてる二人に、苛立ちが募る。

私、こんなに小さい人間だったんだって、思い知らされて嫌になる。



「私、お腹痛いから。
女の子だから、波瑠ちゃんは分かるよね?」

「あ…、
真田先輩、先に行きましょう。」

「然し、塙音は腹痛くらいで休むような者では、」



純粋で鈍感な幸村に分からないように出した言い訳に、波瑠ちゃんは察したような顔。
幸村はやっぱりごちゃごちゃ言ってたから無視して、強引に玄関の戸を閉めた。

波瑠ちゃんが幸村の制服の裾を引っ張ってるのを見て、泣きそうになった。


小さくて、
可愛くて、
フワフワしてて、
守ってあげたくなるような波瑠ちゃん。
幸村は、あんな子が好きなんだ。


適わない、私とは正反対だもん。

波瑠ちゃん、察してくれたみたいだったけど、ゴメンね?



生理さ、先週終わったんだよね。



可愛い彼女、



(だから幸村に愛されるんだね。)

(私も波瑠ちゃんみたいに可愛かったら、)

(幸村の彼女になれたのかな?)



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