01
『塙音ー!
おれのだんごをしらぬか!?』
『あ、ごめん。たべたよ。』
『な、なんと…!?』
『………うそだよ、なかないでよ。』
私のほんのイタズラ心に振り回され、いつも泣いてた幸村。
小さい頃からひねくれてた私と、そんな私を追いかけてくる素直で可愛かった幸村。
いつも2人一緒だったあの頃。
私と幸村は家が隣同士で、生まれた時からずっと一緒。
一緒の保育園に行って、
一緒に剣道を初めて、
小学校も中学校も高校も全部一緒。
幸村がいつの間にか私より剣道が強くなっても、
声が急に低くなっても、
私より背が大きくなっても、
『格好良い』って女の子に騒がれる“男の子”になっても、それでもずっと傍にいた。
これからも、ずっと一緒だと思っていた。
私はずっと幸村の隣に立っているんだって、勝手に思ってた。
「塙音、話があるのだが…」
「んー?」
「今日、こ、こ、告白を、されてだな、」
「あぁ、また『破廉恥』って叫んで逃げたの?」
相変わらず、初心なんだからー。
いつものように家に来た幸村。
私以外の女の子に馴れてない幸村は、今時珍しい位に純情で。
そういうことを口に出すのも苦手な幸村に、いつものように笑った私。
「いや、その、こ、交際することに、なったのだが、」
「、…」
だから、そんなの予想してなかった。
幸村が女の子と付き合う?
どうして、どうして、
顔を真っ赤にして、きょろきょろと瞳を泳がせながらも、少しはにかんだ幸村。
私は、そんな幼馴染みを呆けたように見詰めるしかできなかった。
どんな子だとか、
なんて名前だとか、
辿々しく説明する幸村の言葉は、ちっとも頭に入ってこなかった。
それでも、ひとつだけ分かったこと。
幸村の隣は、もう私のものじゃない。
その警鐘は、
(あぁ、私はこの幼馴染みに恋をしていたんだ。)
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