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―――パシンッ

「遊び半分で、触らないで…」



政宗の手を叩き払い、ピシャリと言ったゆみに、誰もが驚かされた。
少し怒気を孕んだ彼女は呆気に取られているその場を気にもせず、幸村にぴたりとくっついた。



「ha!随分と警戒されたもんだな。」

「当然でしょう。
貴方様の軽弾みな言動が元で、どれ程迷惑をかけたか…
大体、政宗様には国を治める者としての自覚が―――…」

「Ah−!Stop,Stop!
I know.その続きは耳にたこが出来る程聞いてる!」

「いいえ!!政宗様はいつも適当に頷いてあしらって…この小十郎、今日と言う今日は言わせていただきますぞ!!」



ぎゃあぎゃあ。
途端始まった主従喧嘩に、ゆみは政宗を見据えていた瞳をまん丸に大きく見開いた。
今は自分が怒っていたのに、どうして急に小十郎が怒り出したのか。
隣の幸村と佐助を見れば、別段慌てるでもなく、佐助に至っては呆れ顔。
どうやらこの主従の日常なのだろう。
そう言えば、幸村と佐助もよく立場が逆転してしまったようなやり取りをしている。
例えるならば主従ではなく、やんちゃな子供とお母さん。
さながら伊達主従は悪戯な子供とお父さんと言ったところか。

なんとも奇妙な、けれど納得してしまいそうな家族が出来上がってしまったではないか。

1人頷きながら口元を緩ませたゆみだったが、はたと気付けばいつの間にか4人の視線が自分に集まっている。



「ゆみちゃんさ、今なんか嫌ぁーなこと考えてなかった?」

「・・・。」

「…図星か。」



佐助のじっとりとした視線にふいと顔を逸らし、すすと幸村の背中に引っ付くようにして身を隠す。
そうすれば小十郎の長い溜息が耳に届いて、ゆみは少し居たたまれなくなりながらも、内心では首を傾いだ。
自分は狐の面で顔の殆どを隠しているから、表情は読み取り辛いだろう。
そうでなくとも、表情は余り変わらない。
それなのに幸村や佐助だけでなく、会って間もない政宗や小十郎にまで思考を読み取られてしまうだなんて。
これが戦国武将の力量かと、ズレた思考で感心しているゆみに、幸村等は苦笑した。

ゆみほど解り辛く、その癖、変に分かり易い者も珍しいのだ。
表情は滅多に変えない、物静かなゆみだが、その分、纏う雰囲気は饒舌なのだ。
それに自分では気付いていないのだから、全く以て可愛らしいものだ。



「Hey,Honey!
本気だったら口説いて良いんだろ?
俺は、アンタが気に入った!」

「ま、政宗殿!!」



こんなに魅力的な少女には、滅多とお目にかかれない。
政宗が益々愉しげに笑って自分の許嫁を口説きに掛かるのに、幸村は慌ててゆみを抱き締めて隠そうとする。
そんな幸村に嬉しさが込み上げ、ゆみは嬉しそうに口元も雰囲気も綻ばせると、幸村の腕の中からひょこりと頭を覗かせて言ったのだ。



「Please give it up.
I dedicated the body and the mind to Yuki.」



諦めて下さい。
私は、身も心もゆきに捧げたの。



(、ゆみ!?そなた今、!?)

(アンタ、南蛮語が話せるのか!?)

(…?南蛮語、って…英語のこと…?)

(政宗様以外にこれ程話せるとは、)

(ちょっとうちのお姫様、本当に凄いわ…)



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