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「Ah-?
なんだ、すっかり出来あがりやがったのか。」
「ほーんと。
俺様の知らないとこで旦那も大人になっちゃって。」
「あの真田に寄り添えるとは…やっぱりあの姫は只者じゃねぇな。」
「当たり前じゃん。
うちの大事なお姫さんを甘く見ないでよねー。」
「Hey,Keep quiet.(静かにしろよ。)
気付かれるだろうが。」
静かな月明かりの下。
上田城の廊下に怪しい三つの影。
言うまでもなく、それは幸村とゆみの様子を覗きに来た佐助、政宗、小十郎の三人で。
彼等の視線の先、仲睦まじく寄り添って白み始めた空を見上げている幸村とゆみ。
少し戸惑いも窺える初々しい二人は何だか微笑ましいが、そう思っているのは小十郎だけ。
政宗と佐助は、きっと幸村が哀れになる程にからかうつもりであろう。
にやにやと悪い笑顔を浮かべる二人を回収するべきか小十郎が悩んでいた、その時。
「…なに、してるの?」
「、!?」
廊下の角に隠れていた三人の前。
ひょこりとゆみが覗いてきたのだ。
その顔は、いつの間にやら天狐の仮面で隠されているが、不思議そうにこてりと小首を傾ぐ様は愛らしい。
尤も、その背後で怒気も露わに仁王立ちをしている幸村には、冷や汗が出そうになってしまうが。
「佐助…お主、何をしておる?」
「あはー。
俺様、朝の散歩中なのよ。
あー、空気美味しいー。」
冷たい表情で目を眇める幸村に、佐助はにっこりと笑ってみせる。
自分だけでもと逃げの体勢に入ったのだ。
『朝の散歩』を続けようとした佐助だが、然し伸びてきた白い手に袖を掴まれる。
「…佐助、減給。」
「嘘!?
ちょ、ゆみちゃん!?何処で覚えたの!?」
駄目でしょ!
だなんて、慌てる佐助にゆみは幸村と顔を見合わせて笑み合う。
初々しくもあり、長きを連れ添ったようでもある二人の空気はどこまでも柔らかく、政宗の悪戯心は騒いで仕方がない。
ニヤリと口角を吊り上げた自分の主人を見て、小十郎は思わず深い溜息を零した。
「Hey,princess.
真田は確かに強ぇが、初心な男なんて面白くねぇぜ?
どうだ、俺のとこに来いよ。
満足させてやるぜ?」
「…」
「政宗殿!!ゆみに触れるなと、某はあれ程―――」
サッとゆみに寄った政宗は、その顎に指を掛けて上向かせた。
それにカッとなった幸村が、政宗からゆみを引き離そうとしたその瞬間だった。
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