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「Hey,真田!!
先刻のgirlに会わせろ!」
「嫌でござる無理でござる故にお引き取り下され。」
「テメェ…っ」
息継ぎ無しにツンとそっぽを向いた幸村に、政宗は額に青筋を浮かべてひくりと口元を引き攣らせた。
幸村が武田信玄が養女として引き取った姫を娶る。
噂を聞きつけた政宗は、早速奥州を飛び出した。
幸村の初心っぷりは其れはもう有名で。
そんな幸村が嫁を迎えるだなんて、どんな相手か一目見ておかねば。
口うるさい彼の忠臣であり、兄のような存在である片倉小十郎を上手く言いくるめて上田城を目指していた政宗は、偶然にも上田城下で幸村に遭遇した。
幸村は政宗を見るなり、その意図を感じ取ったのか逃げ出した。
足留めの為に飛び出してきた真田の忍を小十郎に任せ、幸村を追いかけてきた政宗は面白い存在に出会った。
戦闘に関しては赤子のような少女が、自分の六爪を受け止めたのだ。
か弱い腕で幸村を守ろうとする、狐の面で顔を隠した少女。
直感的に、彼女は武田の姫ではないかと感じた政宗は、執拗に幸村に会わせるよう迫るが、頑として首を縦に振っては貰えない。
「会わせねぇってことは、やっぱりあのgirlがテメェの嫁か!?」
「は、破廉恥な!!」
「だから違うってば。
竜の旦那、しつこいよ?
あの子は最近来たばかりのくのいち。
俺様の部下ですー。」
「だったら、会わせろ。」
「無理無理。
天弧ちゃん、先刻任務で出て行ったから。」
あはー。
勘の良い政宗を、ボロを出し易い幸村に変わってはぐらかす。
いつ会っても食えない佐助に、政宗は忌々しげに舌打ちをする。
この際、武田の姫だろうがただのくのいちだろうが、どうでも良かった。
政宗は、単純に『天弧ちゃん』と佐助が呼ぶ少女に会いたいだけなのだ。
「…じゃあ、天弧とやらはもう良い。
ゆみ姫…だったな?
会わせろ。」
「嫌でござる無理でござる即刻お引き取り下され。」
「テメェ真田ァ!!
同じ事ばっか言ってんじゃねぇ!!」
ぎゃあぎゃあと怒鳴る政宗。
ツンとそっぽを向いた上に耳を塞ぐ幸村。
それに更に怒鳴る政宗だったが、それも次の瞬間には、けたたましく開いた襖によって遮られることになった。
「政宗様ァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「、げっ!?こ、小十郎…!!」
ぴしりと後ろに撫でつけられた髪、怒りに細められた双眸、額の青筋、頬の傷。
乱入したのは、どう見てもその道の者としか思えない政宗の忠臣、片倉小十郎だった。
完全に怒っているだろう小十郎に、政宗は頬をひきつらせた。
「貴方という方は…覚悟は出来ているんでしょうな!?」
「Hey,小十郎!!
お、落ち着け!!Wait!!」
ゆらり。
どこからか長葱と牛蒡を取り出した小十郎に、政宗だけでなく幸村と佐助も顔を青褪めさせた。
「か、片倉殿!!落ち着いて下され!!」
「右目の旦那!!やるんならお願いだから外でしてよ!!」
あわあわと、必死で宥める政宗らに、小十郎は舌打ちをして構えていた野菜を下ろした。
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