00
夢を見た。
深い森の中。
もっともっと深い場所にある洞窟。
その奥の方に私は眠らされていて。
「ゆみ…」
洞窟の入り口にはいつの間にか誰かが立っていた。
姿を確認したいけど、逆光で見えなくて。
「ゆみ…ゴメンね…?
もう、あちらでは駄目なの…」
優しく綺麗な悲しそうな声。
あちらって、何処?
何が駄目なの?
「本当なら、私が守ってあげなければならないのに…
ゴメンね…ゴメンね…?」
何で泣いているの?
何が悲しいの?
少し冷たい細い指が、私の髪を優しく撫でた。
あぁ…私、知ってる。
優しく私を撫でる手を。
涙声になってしまった、優しく綺麗な声を。
ポロリ…
涙が零れるのを感じながら、私はその人を呼ぶ。
「―――ママ…?」
漸くはっきり見えたのは、やっぱり私のママだった。
先月死んでしまった、大好きなママ。
涙を浮かべたママは優しく微笑んで、泣いている私の瞼に、いつものようにキスをした。
「涙が止まるおまじない…
ママがしてあげられるのは、これが最後ね…?」
そうだね…
だって、ママはもう居ないんだもん。
だから、夢の中でも嬉しいんだ。
ママに会えて、また、おまじないをしてくれて。
「もう直ぐ、迎えにきてくれるからね…?
その人なら、ゆみを守ってくれるからね…?」
…いらないよ。
誰かに守って貰うのなんて、もう、嫌だ。
「愛してるわ…
ゆみ、幸せになってね…」
無理だよ。
私は幸せになっちゃ駄目なんだよ。
だって、ママは私を庇って事故にあった。
私が、ママを殺したんだもん。
その夢は、夢なのに現だった。
.
- 1 -
[*前] | [次#]
ページ: