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夢を見た。

深い森の中。

もっともっと深い場所にある洞窟。

その奥の方に私は眠らされていて。



「ゆみ…」



洞窟の入り口にはいつの間にか誰かが立っていた。

姿を確認したいけど、逆光で見えなくて。



「ゆみ…ゴメンね…?
もう、あちらでは駄目なの…」



優しく綺麗な悲しそうな声。

あちらって、何処?
何が駄目なの?



「本当なら、私が守ってあげなければならないのに…
ゴメンね…ゴメンね…?」



何で泣いているの?
何が悲しいの?

少し冷たい細い指が、私の髪を優しく撫でた。


あぁ…私、知ってる。
優しく私を撫でる手を。
涙声になってしまった、優しく綺麗な声を。


ポロリ…
涙が零れるのを感じながら、私はその人を呼ぶ。



「―――ママ…?」



漸くはっきり見えたのは、やっぱり私のママだった。
先月死んでしまった、大好きなママ。
涙を浮かべたママは優しく微笑んで、泣いている私の瞼に、いつものようにキスをした。



「涙が止まるおまじない…
ママがしてあげられるのは、これが最後ね…?」



そうだね…
だって、ママはもう居ないんだもん。
だから、夢の中でも嬉しいんだ。
ママに会えて、また、おまじないをしてくれて。



「もう直ぐ、迎えにきてくれるからね…?
その人なら、ゆみを守ってくれるからね…?」



…いらないよ。
誰かに守って貰うのなんて、もう、嫌だ。



「愛してるわ…
ゆみ、幸せになってね…」



無理だよ。
私は幸せになっちゃ駄目なんだよ。



だって、ママは私を庇って事故にあった。


私が、ママを殺したんだもん。



その夢は、夢なのに現だった。



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