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「佐助…幸は、いつ帰ってくるの…?」

「うん、俺様その質問もう30回目。」



城の天辺。
帰ってきたら直ぐに分かるようにと、ゆみは佐助の制止も聞かずに一刻程前に其処に登った。
幸村が戻ってくるのは、半刻前の予定。
詰まり、半刻前からゆみの時代で言う一分置きに、必ず同じ事を問うているのだ。
けれども、うんざりするどころか、羨ましくも思う。
ゆみは、それ程までに幸村の事が好きなのだから。



「佐助…幸は、いつ帰ってくるの…?」



不安そうに、寂しそうに抱え込んで座っていた膝に顔を伏せるゆみに、佐助は苦笑した。



「心配しなくても大丈夫だよ。
先刻、旦那に付き添った忍隊の奴から連絡あったから。
旦那、城に向かってるって。」

「、ほんと…?」



ぽすぽすと頭を撫でて伝えてやれば、パッと顔を上げて嬉しそうに伺ってくるのが可愛らしい。
わくわくとした様子で、幸村が帰ってくるだろう方をじっと見ているゆみ。
幸村と同い年の大人びた少女は、幸村の事に関しては小さな子供だ。
可愛らしい妹のような存在を微笑ましく思う佐助も、ゆみに並んで座ってみる。



「佐助、幸はいつ帰ってくるのかなぁ…?」

「うん、もう帰ってくるでしょー。」



32回目のその質問は、もう直ぐ帰ってくるだろう幸村の顔を見れる期待に満ちていて。
たった数刻離れていただけなのに、ゆみはまるで長い間待ち焦がれていた様で。
本当に可愛い子だなとニコニコと笑っていた佐助は、次の瞬間には、ゆみの師匠の筈であるのに彼女より反応が遅れてしまった。



「佐助…、一緒に何か来る…っ!!」

「、これは…!!
旦那、厄介なのに捕まってもう…!!」



まだ姿は見えずとも、肌で感じた。
そして、肉眼で捉えたのは、遙か遠方で上がる炎と稲妻の柱。
徐々に近付く其れに思い当たる節のある佐助は髪を乱暴に掻き、その隣でゆみは険しくなった表情を天弧の面で隠した。



「YA−haaaaaaaaaa!!」

「政宗殿!!しつこいでござる!!」

「Ha!!良いから黙って会わせやがれ!!You See?」



どんどん城に近付く炎と稲妻。
ゆみがやっとの思いで瞳に捉えたのは、幸村の紅い炎に相反した、蒼い稲妻を纏う男。
走る馬の鞍に立って向かい合う二人は、不安定な足場をものともせずに激しい攻防を繰り広げていて。
思わず双眸を見開いて驚くゆみの隣で、佐助は目頭を覆って深い溜息を零した。



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