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「うーん、本当に不思議な話だよねぇー?」



佐助の呟きに、ゆみもこくんと頷いた。
元の姿に戻ったあの日、幾らかは気味悪がられるだろうと覚悟をして幸村達と城に戻った。
けれど、まるで他の者は皆、ゆみはきちんとこの世界で成長してきたかのように気にも留めなかった。

幸村と佐助以外の記憶の改竄が行われている。
矢張り自分の存在を異様だと鬱ごうとしたゆみ。
そんなゆみに幸村は笑顔を向けた。

『きっと、そなたの母上が住み良いようにしてくれたのだろう!』

その言葉に、どれ程救われたか。


その後、養父である信玄の元に向かってみれば、彼を覗く城の者は上田城と同じ状態で。
信玄も驚いては居たが、それでもゆみは自分の娘だと笑った。
それは本物の父の温もりで、ゆみは改めて父娘の温かな抱擁を交わしたのだった。



「ゆみちゃんは旦那と同い年。
俺様、益々旦那が子供に見えちゃうぜ。」

「…、…、」

「あれ?ゆみちゃん、無視?」



俺様、傷付いちゃうー。なんて零す佐助を、ゆみは恨めしそうに睨み付ける。
彼女が返せる状態に無いのを一番分かっているのは佐助だからだ。
婆沙羅者だと分かった日から、ゆみは力の持ち腐れにならぬよう、大切な人達を守れるよう鍛錬を始めた。



「いやー、俺様の見込んだ通り。
ゆみちゃん本当に筋が良いよね!」

「、…、…、」



鍛錬の場所は大概はあの洞窟がある森で、相手は佐助。
佐助が居ないときは真田忍隊の他の者。
修行相手が忍というのは、中々に厳しいものだ。



「あ、旦那が来たね。
じゃあ、そろそろ休憩しようかー。」

「…っ、…っ、」



飄々とした佐助に対して、ゆみはすっかり息も上がっていて。
それでも、木々を軽々と飛び交えている自分は、ほんの一月前までは平凡な女子高生だったとは思えないなと感心するほど。
幸村の姿を漸く捉えたゆみは、佐助に続いて高い木からザ…ッと飛び降りた。



「ゆみ、佐助。
調子はどうだ?」

「良好良好!
ゆみちゃん、やっぱり筋が良いし飲み込み早いし、良い生徒だよー!」

「誠か!!
いや、然し…矢張りその衣は…」



ゆみは本来より運動も好きで、護身術としてカンフーの心得があった。
軽い身のこなしに、バネのある柔らかな身体をしていたゆみに、試しにと佐助が稽古をつければ面白いくらいに飲み込んでゆく。
満足げな佐助に幸村も笑顔を見せるが、ゆみを見て直ぐに顔を赤くして目を逸らした。
もごもごと口ごもる幸村に、ゆみは自分の姿を見下ろした。
相も変わらず、幸村のお下がりを身に纏っている彼女。
と言っても、其れだけでは余りにも破廉恥な格好になるため、工夫はしてある。
幸村と揃いを好んで、白地に炎のような模様が入ったショートパンツに、黒のハイネックのノースリーブをインナーに着込み、その上に幸村のお下がりの着物。
自分的には花丸をあげたいコーディネートだが、インナーの丈が胸下までしかないところや、露わになった肩や太腿は幸村には刺激が強いようであった。



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