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「ゆみちゃん…なんだね?」



幸村と一緒に彼の愛馬に跨って、少しも走らぬ内に、目の前に迷彩が降ってきた。
それは、幼い姿だったゆみを、いつも甲斐甲斐しく構っていた佐助で。
じっと見定めるような彼に、ゆみは幸村の衣をぎゅう…っと握り締めた。

けれど、幸村の時と同様。



「いやー、こりゃまた凄い美少女だ…
俺様、ドキドキしちゃう!」



アハー、と、いつもの気の抜けた笑いを零す彼にゆみは気の抜けたように安堵し、幸村も嬉しそうに笑った。



「佐助、よく分かったな!」

「いやー、だってどう見たって、ゆみちゃんじゃん。
なんか大人になってるけど、しっくりくる。」



こうもすとりと受け入れられるなんて。
逃げ出した自分が馬鹿みたいで、ゆみは苦笑した。



「あ!?
ちょ、ゆみちゃん怪我してるじゃん!!
どうしたの、これ!?」



暫しののんびりとした会話の後、ゆみの腕が衣毎切れているのに気付いた佐助は悲鳴を上げ、素早く応急措置を施す。
相変わらずの過保護っぷりで、ゆみはハニかむばかり。



「それだが、佐助…
先程、ゆみは明智殿に襲われたのだ。」

「、何だって!?」

「それと、ゆみは氷の婆沙羅者であった。」

「はぁっ!?」



明智に襲われていたことに目を剥き、婆沙羅者だと言うことにひっくり返りそうになる。
驚きどころ満載な主の言葉に思わず頭を抱える佐助に、ゆみは再び小首を傾いだ。



「ゆき…婆沙羅者って、なに?」

「あぁ、そなたは知らなんだか…
婆沙羅者とは、婆沙羅と呼ばれる不思議な力の持ち主のこと。
先刻、一帯を凍らせたあの力のことだ。」

「…」



幸村の説明に、ゆみは己の両手をじっと見詰めた。
彼等は驚くばかりだが、本来なら異様な力。
不安そうなゆみの様子に気付いたのか、幸村と佐助は笑んだ。



「婆沙羅者は、とても貴重な存在。
羨ましがれど、忌み嫌う者は皆無に等しいのだ。」

「そうそう。
因みに、旦那は炎の婆沙羅者だぜ?
俺様も、闇の婆沙羅者だしさ。」



お揃いだねー、とへらりと笑う佐助に、胸のつかえがとれる。
この力は、特別だが忌み嫌われるものとは違う。



「これで…幸を守れる?」

「あれ?俺様は守ってくれないの?」

「うるさいぞ佐助!」

「ちょ、何で怒るの!?おかしくない!?」



いじめだ!といつものように喚く佐助に、幸村と顔を見合わせて笑う。
欲した力が、この手にある。
これで、大切なものが守れる。



「私、守る…幸のこと…
佐助も、守ってあげる…」



守るべき存在からのその言葉。
嬉しくて堪らなくて、幸村も佐助も破顔した。
大人びていて、生まれたばかりのような無垢な心。
守り通さねばと再び決意を固めた二人の視線の先、ゆみはひたすらに嬉しそうで。
やっと自分達の中に落ち着いたゆみを、二人はずっと嬉しそうに見詰めるのだった。



両手に握り締めた、守れる力。


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