06(2/3)
「みんなにあげたから、少なくなったの…」
「そうであったか!
皆、喜んで居っただろう?」
「…」
『みんなに』と言うゆみの言葉に嬉しそうにする幸村に、ゆみはくすぐったそうに頷いた。
女中達などは、手伝いを断られて悄気ていたが、ゆみが恥ずかしそうにクッキーを差し出せば、嬉々として泣き出す者まで居る始末。
思い出すと、また恥ずかしくなる。
「ゆみ…良ければ、また作ってはくれまいか…?」
本当に気に入ったのだろう。
おずおずと伺う幸村に、二つ返事で了承を返す。
たかが半月、されど半月。
自分でも信じられないほど、ゆみは幸村に依存していた。
守られるんじゃなく、守りたい。
太陽のような笑顔を向けられるなら、なんだってする。
力を欲しながら、心地好い縁側で夢の縁へと誘われた。
いつもなら佐助がやってきて、凸凹主従のコントのようなやり取りを楽しむのだが、彼は先程任務で発った。
ならば、たまには静かにうたた寝も悪くない。
幸村も同じ気持ちなのか、眠そうな瞳で船を漕ぎだしたゆみを抱き上げ、自室に向かった。
いくら暖かいと言えど、縁側で寝ていれば風邪を引くかもしれない。
風邪をひかなかったにしても、そんなところで寝ているところに佐助が帰って来ようものなら、間違いなく幸村は説教を食らうことになるだろう。
『こんな小さな女の子を、縁側で寝させるだなんて!!』
いつの間にか、ゆみの母親のようになってきた自らの忍を思い浮かべながら、幸村はふらりと歩みを進める。
うつらうつらとしながらも、漸く自室にたどり着けば、しまっていた布団を引きずり出し、整えないままにそこに倒れ込んだ。
幸村に抱かれたゆみも目を覚ましはしなかった。
やがて、室内には二人分の寝息が響くだけ。
穏やかな眠り。
心地好い昼下がり。
二人は、目を覚ましたときに何が起こっているかだなんて、知り得る筈もなかった。
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