04(2/3)





「ゆみちゃん、美味しい?」

「…」

「それは良かった!」

「ふぁふへ!ほほふぁんほふぉふふぁひほ!(佐助!この団子も美味いぞ!)」

「ちょ、旦那汚い!口にもの入れたまま喋るなって!」

「…」



3人並んだ日当たりの良い縁側。
その光景もいつも通りで、通りかかる女中は微笑ましく思いながら眺めた。
団子を口いっぱいに頬張ったまま喋る幸村と、それを注意する佐助の間、ゆみは行儀良く菓子切りで一口大に切った葛餅を口に運ぶ。
自分のペースを保ったままで、もむもむと一心に葛餅を頬張る様は、まるで小動物。
佐助は、そんな彼女に少し冷ました茶を差し出す。



「火傷に気を付けてね?」

「…」



小さな湯呑みを小さな両手で包み、ふぅふぅと息を掛けて冷ます。
ゆみは猫舌で、最初に一緒におやつを食べた日には、熱々のお茶に舌を火傷し、大きな瞳に涙を浮かべていたものだ。

やっと自分の飲める熱さまで冷ましたゆみは、こくこくとそれを嚥下する。
それを微笑ましく見守っていた佐助は、隣で幸村が熱々の茶に口を付けて悲鳴を上げるのを無視した。



「そう言えば、なんでゆみちゃんは天井裏なんか散歩したの?
城内は飽きた?」

「…」



思い出したような佐助の問いに、ゆみはふるふると首を振った。
確かに城から外には出てないが、別に飽きたからではない。



「ゆみは佐助の真似をして居ったのだ。」

「…へ?」



口を聞かないゆみの代わりに言った幸村に、佐助は惚けたように瞬きを繰り返す。
佐助のその視線の先、ゆみは小さな両手で忍よろしく、印を結んでみせる。
その様が何とも愛らしくて、佐助は思わずゆみを抱き締めた。



「なにこの可愛い子!
俺様、嫁に欲しい!」

「ならぬ!!ゆみは誰にも渡さぬぞ!!」

「…」



ぎゃあぎゃあと自分を挟んで口喧嘩を始めた主従に溜め息を零しながら、ゆみは再び甘味を食べ始めた。

もう、固く閉ざしていた筈の心は、十分に開いていて。
幸村も、佐助も、大好きだ。
彼らが居なければ、きっとゆみは一生心を閉ざしたままで虚しく死を迎えていた。
彼らに出会えて良かった。
拾われて良かった。


ゆみは小さな決意を固め、深呼吸を始めた。
そうすると、目聡く異変に気付いた二人は心配そうに覗き込む。
そんな視線を受けて、ゆっくりと頷いたゆみは、幸村の着物の袖を引いた。



.

- 10 -


[*前] | [次#]
ページ:




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -