最初の頃は、少し変だな、ぐらいにしか思わなかった。まあ別にそういうこともあるかなと出来る限り気にしないようにしてきた。でもやはりおかしい。彼は私の名前を呼んだことがない。不自然なくらいに。それが不思議でそれ以降ずっと何故だろうかと考えてきた。そして、やっと、その理由に辿り着いた。彼は、私ではない誰か別の人を見ている。私を通してその人を見ている。

「レックスは、その人とどういう関係だったの?」
「どういう、と言われても……仲間かな、うん、仲間だった。大切なね。もう何百年も昔のことだけれど」

仲間という割には随分と私を見る目がそれとは違うようだけれど。思わずそう言ってしまいそうになって言葉を飲み込む。口にしたら、きっと私はとても後悔することになる。

「私はその人に似ているの?」
「……そうだね。似ているよ、とても、よく。君に名前を呼ばれると、彼女に呼ばれてると錯覚してしまうぐらいには」

胸がずきりと痛んだ。馬鹿だなあ、なんでこんなことを聞いてしまったんだろう。彼はその人のことを今でもとても想っている。私が経験することのない長い年月を経ても尚、こんなにも想っている。でも、そうだとしても、私の名前を呼んでよ。私はその人ではないんだから。

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