「なまえ殿は随分と不思議な歌を口ずさむのですね」
「うーん、そんなに不思議かなあ…」
とはいえ此処はなまえの生きていた時代とは違う。現代ではこんなような曲は当たり前のように溢れ返っているが、確かにこの時代では非常に珍しいものだろう。もしもなまえと幸村の立場が逆であったならば、きっと同じ反応をしていたに違いない。
「幸村さん、この歌覚えてみる?」
「私が…ですか?」
未来の時代の歌を教えてしまっていいのかは分からないが、少しぐらいなら平気だろう。それにそもそも本当に此処が過去か怪しいものだ。過去にしてはなまえの知っている戦国時代とあまりにも違う部分が多すぎる。
「私などになまえ殿の時代の歌を覚えられるでしょうか…」
「大丈夫、大丈夫。幸村さんならできるって」
励ましの意を込めて笑いかければ、幸村は大層真面目な面持ちで頷いてみせた。まるで今から戦場に赴くかのような顔だ。なんともまたそれが幸村らしく、しかしやはりどうも呆れてしまう部分でもあり、なまえとしては苦笑するしかなかった。