卑猥だ。つい思っていたことが口から出た。隣を歩いていたなまえちゃんがきょとんとした顔で僕を見つめる。ぽたり、と手に持っていたアイスの一部が溶けて地面へと落ちていく。

「え、何が?」
「あー……ううん、何でもないよ」

まずい。誤魔化さないと。そうは思ってもいい言い訳が思いつかず適当に返す。絶対にこんな答えじゃ納得しないと思ったのに、なまえちゃんは意外にもふうんとだけ言ってアイスへと視線を向けた。そして先程のようにアイスを舐め始める。駄目だ視線を外せと思うのに僕はその姿を見つめてしまう。暑い暑いと言いながらアイスを舐めるなまえちゃんは卑猥だ。そういう目で見るつもりなんてなかったのに一度そう見えてしまうとそうにしか見えなくなる。なまえちゃんのことが好きだから、そう見えてしまうのはある意味で仕方のないことなのかもしれない。そうだとしてもたかがアイスを舐めている姿をそういう目で見ていると知られたら、と考えると恐ろしくてたまらない。相変わらず僕の考えなど知らずにアイスを舐め続けるなまえちゃんからなんとか視線を外し、邪な考えを振り払うように自分のアイスを口に含む。冷たく甘い味が口内に広がる。するとなまえちゃんがこちらに視線を向けたかと思えば、口を開きぼそりと呟いた。

「狡いなあ」
「え?」
「あ、いや、その……何でもないの。うん、何でもない」

慌てたようになまえちゃんは目を逸らす。よく見ると顔が赤い。暑さのせいだろうか。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -