目の前に突然とチョコレートケーキが置かれる。わけがわからなくてなまえを見つめれば、ただじっと見つめ返された。口を開く様子はない。これは一体どういうことだ?

「えーと、これは…?」
「チョコレートケーキだけど」
「いや、そうじゃなくって」

ああそういうことかと納得したようになまえは頷く。

「この前、ばれん…なんとかってことについて、ガゼルと話していたから」
「もしかして、バレンタインのことか?」

確かにこの間、ガゼルと元の世界について話をした。その際にバレンタインの話もしたかもしれない。そしてそれをなまえが聞き、俺にチョコレートケーキを持ってきた。これはつまり、

「ねえ、ハヤト、顔が赤いよ」
「そ、そりゃあ、赤くもなるだろ! だってこれってつまり…」
「うん。そういうことかな」

まさか俺のことが好きだなんて思ってもみなかった。いや、そうだといいなと何度か思ったことはあった。両想いなんだな、と思うと段々と恥ずかしくなってきた。とりあえず、返事の代わりにこのチョコレートケーキをいただくことにしよう。


title : Aコース

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