みんなバレンタインだなんだと女子も男子も浮ついている。浮ついてないのなんてサッカー馬鹿な円堂ぐらいじゃないだろうか。あいつの頭の中はいつもサッカーばかりだ。

「なまえちゃんは誰かにあげないの?」

マネージャー達で集まってサッカー部のみんなに義理チョコを作る際、秋ちゃんにそう尋ねられた。しかし残念ながら秋ちゃん達と違って私は本命をあげるような相手がいない。バレンタインなんて正直ちっとも楽しくないのである。

「なまえは、バレンタインは誰かにあげるのか?」

部活も終わって幼馴染である風丸と帰り道を歩いていると何を思ったのか突然とそんな事を言い出した。急になんだ。やっぱり風丸もバレンタインに浮つく一人なのか。それになんでわざわざ風丸に言わなきゃならないんだと思ったが、別にあげる相手がいないのだから隠す必要性もないだろう。

「そんな相手いないけど?」
「……本当に?」
「あのね、本当にいないんだからこんなことで嘘なんてつきませんー」

すると風丸はどこかほっとした表情になった。かと思えば何か思いついたように口を開く。

「じゃあ…いや、やっぱりいい」
「なんで言うの止めるの。最後まで言ってよ」
「いいから忘れろ」

変な奴だ。それにしてもきっと風丸のことだからバレンタイン当日はたくさんチョコレート貰うんだろうな。サッカー部に入ってから陸上部にいた頃よりモテているようだし。なんて考えていると、なあ、と声をかけられた。

「バレンタイン、楽しみにしてろよ」

なんで?それに今のって女の子が言う台詞じゃない?
そう思ったものの、口に出さず適当に相槌をうった。なんだか、風丸が私に向ける視線が少し熱っぽい気がした。

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