「なまえ殿はチョコレートをくれないのかい?」

さあ帰ろうと下駄箱へ向かえば郭嘉殿が待ち構えており、そう言ってきた。何故待ち構えているのか。また、にこにこと笑みを浮かべているのがどうも腹立たしい。

「郭嘉殿は多くの女性からもらっているのですから私のチョコレートなど必要ないでしょう」
「私は、貴女のが欲しいんだよ」
「生憎、郭嘉殿用のチョコレートを用意しておりませんので」

ああさっさと家に帰りたい。私は郭嘉殿が苦手だ。こういう女性に形振り構わず甘い言葉を囁くタイプは好きではない。それに何より父と兄、曹操と曹丕から郭嘉殿にはあまり近づくなと言われている。近づいて食われても知らぬぞと。

「それは残念だ。…では、代わりになまえ殿を貰おうかな」

郭嘉殿の手が私の頬に触れる。触れられただけなのにそこだけ熱を帯びたように熱い。慌ててその手を引き剥がせば、郭嘉殿はくすりと笑った。

「なんてね」
「か、郭嘉殿!からかうのは止めてください!」

では本当に貰ってもいいのかな。目にぎらりと怪しいものが見えた。まるで獣のようだ。私は思わず唾を飲み込むしかなかった。


title : 彼女の為に泣いた

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