恋愛小説なんかで目にする『キスの雨が降り注ぐ』とは、まさにこんな状態なのだろう。外はまだ明るくて、ディーノはもちろん私だって仕事中だというのに。ぼんやりとそんなことを考えながら、角度を変えて何度も重ねられる唇を受け止めていた。
ただコーヒーを差し入れにきただけなのに、いつの間にかディーノの膝の上でされるがままで。やがてそれは啄むような肉感的なものになり、私を抱きしめる腕にも熱がこもっていく。
ディーノはスキンシップが多くて、もちろんキスをする回数だって一般的な感覚より多い方だと思う。それでも普段はもっと軽い、触れるだけのキスのはずなのに。もしかして、これは。
「ディーノ、疲れてる?」
「ん? そんなことないぜ」
「嘘。昼間なのにキスがしつこい」
ディーノは私の言葉を否定することなく、なんとも言えない苦笑いを浮かべていた。どうやら図星だったらしい。よく見れば瞼の下にはうっすらと隈ができているし、肌の調子もなんだか良くなさそうだった。
「ちょっと昼寝しよう」
「いや、まだ仕事が残っててな」
「それって私との昼寝より、楽しい?」
「ったく、ナマエには敵わないな」
ディーノはため息をついて、私を抱えてソファーに寝転んだ。そのため息すらちょっぴり嬉しそうに聞こえたのは、私の勘違いなんかじゃない。ディーノは私にうんと甘いのだ。
「おやすみ、ディーノ」
ソファーの背もたれとディーノのおっきい体の間に挟まって瞼を閉じる。すぐに聞こえはじめた寝息が愛おしくて仕方がなかった。
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