「……?」
「………。」
『一方通行‥‥?』
今日ザックスは教会に現れてから花たちの手入れをしているエアリスを無言で正面から見続けていた。
今に至る数時間前──‥
「あ゛ーーー!もうめんどくせぇ」
「仕方ないだろ。これも仕事なんだし」
ザックス達は珍しく机に向かい仕事をしていた。
「だってよぉ、」
机に顎を置いてチラリと横を見れば書類の山が聳え立っている。
「お前が、悪い!任務報告書なんか任務から帰って直ぐに書けば良いものをミッドガルに帰るなり直ぐに教会に遊びに行くからこんなことになるんだよ」
「違う!」
「何が?」
「遊びじゃなくてデートなデート!」
「……はいはい」
あーエアリスに会いに行きたいな…。
「ダメだからな」
「………良く分かったな。カンセル」
「よく分からないと思ったな。ザックス」
………ちぇっ。
「なぁザックス?」
「んー?」
「今回は珍しく長いな」
「おうよ!ほらカンセル前に言ってたろ?」
「……なんか言ったっけ?」
「運命の娘だよ運命の娘!」
俺はカンセルが前に話してた“この娘だ!!”って思える相手はエアリスなんだって確信してる!
「あー…」
なのにこの男は!
「本当に?」
余計なことを言いやがるんだ。
「どう言う意味だよ!?」
「いや、ほら片想いかもよ?って」
「なっ!?……なんだよ!それ!?」
「いやいやいや、ちゃんとお互いは通じあってんのかな〜?って」
「あったり前だろ!?エアリスとは俺の好きな色から好きな食べ物!心の中まで通じ合ってるって!」
「そんなの俺だって知ってるよ。好きな色は赤で食べ物はハンバーグだろ?」
ザックスはニヤリと笑みを浮かべた。
「ハズレ!好きな色は碧で食べ物はゴンガガ名物の…」
「ちょっと待て。碧?お前は赤だろ?ヒーローとか英雄の定番色」
「お前バカにしてるだろ」
「してない、してない」
……その顔は絶対バカにしてんな。
「まぁお前に通じてなくても俺はエアリスと通じ合ってれば良いし」
「怪しいな〜」
「じゃあ証明してやるよ」
ガタンッと勢いよく椅子から立ち上がり、あとヨロシクと残しザックスは風のごとく去っていった。
「あっ!ちょっと待て!!ザックス仕事を押し付けんなよ!おいっ!!っっやられた!!」
────‥
そして、
「…ザックス?」
「………なに?」
「えっと……?」
現在のエアリスが困惑する状況へと陥ってしまったのだった。
「エアリス、分かんない?」
「……なにが?」
「通じてない!?」
「……………うん。」
しおしおと落ち込む俺にエアリスが、「ごめんね」って言ってくれたけど……。
そりゃないぜ、エアリス〜
「なんだったの?今の」
「………。」
俺はめげずに、もう一度エアリスに通じるよう祈りながら見つめてみた。
今度こそ!
(エアリス好きだ!)
どうだ!?
「なに?」
本日2度目の撃沈…
「はぁ。良いんだエアリス。なんでもないよ」
今日1日の元気が無くなった‥‥‥。
もう、こうなりゃ…!
ザックスは肩をがっくし落としながら重い足取りで椅子の上にゴロリと横になった。
「ザックス?疲れてるの?」
「んー…そう。おやすみっ!」
ふて寝だ!!
「そっか。」
そっか!?エアリスは俺のことその程度な訳か?
はぁ。
「じゃあ、私、向こうでお花たちの手入れ。してるね?」
「……。」
泣いても良いですか?
ねぇ、せっかく来たのに寝てたらつまらないよ?とか、構ってよ。みたいなものないのかな…。
やっぱり、俺の…
「エアリス!」
「おはよう。」
ザックスがガバッと起き上がると目の前にエアリスの笑顔があった。
「…お、おはよ」
「ふふっ」
「あれ?花の手入れ……なんで?」
「ああ言えばザックス、起きるかな?って」
「あのさ……起きてほしかった?」
「うん。」
お?
「だって、せっかく来たのにザックス、寝てたらつまらないよ?」
おおぉ!?
「そーか、そーか」
「ザックス。機嫌直った?」
「エアリスの笑顔見たら直った!」
「そう、よかった!じゃあ、はい。これ」
そう言ってエアリスが俺に一本の赤い花を差し出してくれて、なんか色々と恥ずかしくなって照れ隠しにガシガシと頭の髪をいじってから受け取った。
「ありがとうエアリス」
「仲直りの記念ね?」
「じゃあさ。」
ちょいちょいと俺は自分の頭を指差したらエアリスは一度ニコリと可愛く笑ってから頭に花を乗せてくれる。
ほらな?
「うん。バッチリ!」
大丈夫!俺とエアリスは、きっと、ちゃんと───
通じ合ってる。
「やっぱり、似合うね?」
「そーだろ、そーだろ」
「うん。ザックス赤、好きだもんね?」
「………。」
「エアリス。俺の好きな食べ物知ってる?」
「ハンバーグ?」
………多分。
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ザク→エアじゃないですよ?ザクエアです!子供みたい(?)なザッくんも素敵です。
2010 07 30