この教会はスラムに建ってしまっているせいなのか、はっきり言ってボロボロであまり綺麗と言えた物ではない。しかしそれでも漂う空気は澄んでいて外のような重苦しいものは感じさせなかった。



見上げれば天井にはぽっかりと空いてしまった、人1人分の穴…。
そこから差す光が教会に咲く花達を優しく照らし出していた。



その穴に向かって今日も一人の少女が静かに強く祈る姿がある。








「またお祈りですか、と」




「……びっくりした。レノ、いつの間に居たの?」


「ちゃんとノックしたぞ、と」



「クスクス、変なの。何でノックするの?ココ、皆の教会よ?」




それは当たり前の話なのだが、レノは言われて“それもそうだな”と思う。
隙間から見えた彼女の祈りを無断で邪魔するのが何かいけない事のような気がして考えるよりも先に手が動いていたのだった。



「仔犬の心配かな、と」


「…ザックスきっと元気、してるよね?」









「元気のないアイツは想像できないな、と」





「ふふっ、私も。」


その笑顔は力がなくて、なんだか柄にもなく悲しいなんて感じたレノは言葉に詰まった。


「ザックスには、内緒にしてね?」


「何でかな、と」


「ザックスはきっと、元気で無事帰ってくる。その時コレ、笑い話でしょ?だから内緒。」



「他のメンバーにも言った方が良いんじゃないですか、と」


「ツォンなら必要ない、見てないふりするもん。ルード、言わなくても言わないでしょ?」


―――成る程な、と




「シスネはいいのかな、と」
「彼女は平気。」

「何でかな、と」












「だって、女の子だもん。」


―――そういうものなのか、と


「だから、レノにだけ注意すれば、問題ない。良い?約束。」







「了解だぞ、と」


満足そうにエアリスが笑うのを確認してレノは本題に移った。


「じゃあ今日こそ一緒に来てもらいたいな、と」







「い〜〜や。」


エアリスは先程の笑顔のままに答える。


「まぁ、分かってはいたぞ、と」


やれやれと首を横に振ってからレノは教会の扉を開けまた来る事を伝えて出ていった。



















―――‥。




「あはははは!バッカだな〜エアリス、そんなこと毎日しなくたって俺は余裕だって。」


「もう、心配したのよ?」


「ははっごめんごめん、ありがとなエアリス。」




――――‥。











『笑い話』



いつかそうやって本当に笑えるならば………。







「俺は何も言わないぞ、と。」





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折角このサイトでは珍しい二人の話なのに暗い…。
明るい話を描けるようになりたいです。(´Д`)

2010 05 19


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