シナワスレナグサ







あの花をまだ、持ってる。




初めての、お花。




あの、名前も知らない花を持っている。




ずっと、ずっと、持ってる。


ずっと、ずっと、待ってる。






大切に  大切に


名前の知らない名前の名前を知る日を












待ってる――。




















「じゃーん!お土産。」

「これは?」

「ん?だからエアリスへのお土産!」


目の前に突き付けられたのは、一輪の花。


「それは分かるんだけどね?これ。どうしたの?」

「キレイだから取ってきた。良いだろ?この花知ってる?」
「ううん。知らない、かな?」


「だろ?だろ?俺もミッドガルとかじゃ見ないな〜。って思ってさ!」

ふふっ。最近のザックスは、お花の種類をたくさん覚えてくれたみたいで、
お仕事の先で珍しいお花。キレイなお花を見ると、たまにだけど、こうやって持って来てくれる。


「上手くなったね?」

「見つけるの?」

「違う。」
「じゃあ、何が?」


「お花の摘みかた。」

あぁ。って言ったザックスは初めてとってきてくれた時のお花を思い出したのか
照れ隠しに笑いながら、いつものように後ろ髪をガシガシいじりながら私ら目を逸らす。


「あれは酷かったよな〜。」
「クスクス。」

「なんてったてエアリスに渡したときにはもう、しおっしおだったもんな!」

ザックスが覚えたのは、花の種類だけじゃない。
お花の管理の仕方だったり、摘みかただったり色々。
前に「本で読んだの?」って聞いたら

「スゴイお手本が目の前に居るじゃない!」

って。ふふっ、ザックス器用だもんね?
私の作業とかを見て覚えちゃったみたい。

でも、その前は本当に酷かった。


お花って、こんな風になるんだって、逆に感心させられちゃったぐらい。



「…ぷっ。ふふっ、」

堪えきれなくって、気づけば肩を揺らしながらお腹をおさえて笑い出す。


「聞いちゃったもんね?“コレ何?”って」

その言葉にザックスも堪らきれずに、私と同じようにお腹を抱えて笑い出してた。


「いや〜、俺も困ったもんな!結局“元・お花”なんて言ってさっ!」

「ちょっと、ザックスやめてよ〜。」

「じゃあ結局今は花じゃなくって、なんなんだよ!って俺自身思ったぐらいだしな〜!」

「初めて見たよ?あんなお花。」




ひとしきり二人で思い出し笑いを楽しんだ後。
涙が溢れた目元を丁寧に拭きながら、笑いづかれた息を整えて

「上手になったね?」

「まぁーな!」

ザックスが、疲れたと言わんばかりの盛大なため息をついて、ドカッと椅子に腰を落とした。


「これはなんて言うお花?」

「大輪朱鷺草だったかな?」
「タイリントキソウ?」

「なんかさ、そこでしか咲いてないんだってよ。」
「そうなの?」

「日当たりのいい湿地に咲くんだって。この前チョコボファームの人に教えてもらったんだ。」

「チョコボファーム?」
「チョコボを貸してくれたり、育ててたりするところな。」

「へ〜。」
「今度連れってってやるよ!」

「ありがとう。ところで」

「ん?」

「さっき話した、元・お花。何か分かった?」

「アレな〜…。」










―――…



あの時、必死に弁解しようとザックスが
「信じないかも知れないけど、見つけたときは本当にキレイだったんだって!」
「スッゲ〜良い香りもしてたんだって!」
「いや、ホント超キレイだったんだって!」

疑ってたわけじゃなかったのに、ザックスの勢いに負けて

「じゃ、じゃあ、今度。またお願いね?」
「おう!次こそ任せておけって。」

されが、ザックスのお土産の始まり。



「その…えっと、お花?の名前は?」
「分からん。」

「え?」

「キレイだな〜。エアリスに見せたいな〜。って思ったから取ってきただけだからな。名前は知らないんだ。」

「そうなんだ。」

「今度調べてきてやるよ。」

「ふふっ、お願いね?」





…―――











「確かにあの辺りで見つけたんだけどさ…。」

「見つからないの?」

「まぁな。本でも調べてみたんだけどさ」

「やっぱり見つからないの?」


「いや、」

「?」


「俺さ、意外と本読むの苦手なんだよな。」

ニカッと笑って見せたザックスだったけど、どこか少し困っているように見えた。

「ザックス。」
「ん?」

「全然意外じゃないよ?全っ然。」

「ムッ。強調していうことないだろ〜。」

ザックスにいじわる言うのは面白いの。
全部、全力で答えてくれるから、

楽しい。って思わせてくれる。


「待ってろって。また見つけてやるからさ。」
「ふふっ、楽しみにしてるね?」

「まっかせなさい!」














大丈夫。


















































大丈夫。




今も信じて待ってるよ?






あの日からずっとずっと待ってる。


あの日からずっとずっと持ってる。







あのね?


ザックスと二人で大笑いされちゃったあの、お花。



まだ、持ってるんだよ?

帰って直ぐに、押し花にしたんだ。





ザックスが初めてくれてお花だから。





あの時は照れくさくって言ってあげられなかったんだけど

ザックスが必死で弁解してるとき、お花を思い出してる顔が








綺麗だったから。







今でもこの汚い押し花が綺麗に見えるんだ。






名前、知りたいです。

どこにいるか、聞きたいです。









ザックスが帰ってきた時は、きっと。



このお花の名前も






私の初めての気持ちにも



両方の名前を知れる気がします。






アナタに教えてほしい。


だから、





















大丈夫。
信じてます。






















2013 7/12

お久しぶりです。このただの文字の羅列によるSSだと言い張る物の意味を理解できた方は暗号解読者になれる才能がありますよ(笑)

ちなみに、大輪朱鷺草はそこそこ本当のはなしです。あと題名の補足なんですが、シナワスレナグサっていうのが本当にあります。
ワスレナグサに似ていてもっと全部青い花なんですが、ワスレナグサの花言葉が「私を忘れないで」有名ですね〜。
シナワスレナグサの花言葉が「真実の愛。」エアリスの花がワスレナグサで良く似たシナワスレナグサの花言葉が真実の愛だなんて、ネタじゃない!?

ってわけでネタにしました(笑)



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