『“たったヒトリ”』
変だな、とは思ったの。
私が神羅の人間だって分かったときのエアリオの瞳。
見る見る変わっていく、なんて表現じゃ足りない。
――――変貌。
一瞬にして瞳の色が変わったのがハッキリと分かったわ。
知らなかったの、貴方が神羅に監視をされている身で世界にたった独りの生き残り“古代種”だって。
――――たった独り……。
そんな事実をシスキから聞かされ、じっとなんかしていられなくて私は早朝から教会へと急いだ。
「エアリオ……?」
居るわけないよね、だって幾らなんでも時間早すぎだし。
ザックネは教会の天井に開いた穴から遥か彼方に在る空を見つめた。
そういえば初めて……よね?私がエアリオを待つのって。
いつも私がエアリオを待たせてる……。
――教会にたった独りで。
ザックネは途端ぎゅっと胸が締め付けられる思いをして苦しくなり胸をおさえ今にも泣きそうな顔で天を仰いだ。
「エアリオ……。」
消え入りそうな声で想い人の名を口にしたが、その音は静かにゆっくりと教会の静寂な空気の奥へと消えた。
キィ……。
「あれ?ザックネ?」
音がして振り返ればエアリオが居て、気が付けばザックネは走り出していた。
「エアリオ!!」
「ど、どうした?」
いきなり抱きつかれ驚きながらも抱きしめ返してくれたエアリオをザックネは更にぎゅっと抱きしめた。
「今日、来るの早いな?」
「うん。」
「あれ?約束、した日だっけ?」
「うん。」
「仕事休み?」
「うん。」
「ちょっとだけ、苦しいかも。」
「うん。」
ザックネは答える度に抱きしめる腕に力を込めていた。
「本当、どうした?こんな朝早く。」
「…エアリオ……私、「あ、分かった。怖い夢、見たんだろ?だから、こんな時間から居るんだな?」
「…えーそうよ。」
まったく人の気も知らないで。
ザックネは投げやりな感じに答えて少しだけムスッとした。
――なでなで。
「大丈夫。俺いつも一緒だから、安心して?傍にいるから。」
軽く頭を撫で、覗き込みながら元気づける様な口調で言うエアリオの瞳が、あまりにも優しすぎてザックネは切なかった。
「……うん、ありがとう。」
本当、人の気も知らないで。
貴方が
“世界にたった独りの生き残り”ならば
私は
“世界にたった一人の味方”になる。
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パラレルならではのお互いの価値観が違う視点での捏造ですね。とか言い訳をしてみます(^-^;
2010 05 09