ーデー






「ツォンはエアリスと小さい時からの知り合いなんだよな?」

「あぁ、そうだ。」

「じゃあさ、お前は聞いたことあるか?」



「何をだ?」






「エアリスの“助けて”って一言。」


「…言われたのか?」

「いんや、言われてない。言われたいんだけどね、俺は。」

「エアリスは私達が思っている以上に強い。だから「それだよ!」



「…。」

…何なんだ。



「多分さ、その認識が間違ってんじゃない?」


「どういうことだ?」

「まぁ俺の予想っていうか、想像でしかないんだけど、昔エアリスは助けて。って言ったんだ。」


「…。」

「だけどその言葉は音にならなかった。ココまでで止まっちまったんだな。」

そう言ってザックスが喉のあたりを指差して見せた。


「…。」

予想、想像…。


なのに、今まさに現実を目の当たりにしたような錯覚。
じわりと背中をつたう汗。
喉の奥で突き刺すような苦み。




不確かな、確証だった。


「…何が言いたい。」



「きっと、まだある。」


ザックスが優しく自分の喉に触れる。



「言葉や想いってのは誰かに伝えなきゃな。知ってほしいと思ったものなら尚更さ。」


ザックスが数歩進み、私の前で空を見上げる。
綺麗な青など存在しない、プレートに覆われた息苦しい空を。



「俺はエアリスに知ってほしい。あの子が呼ぶなら例え何処にいようと俺はすっ飛んでくるってな。」


「でもエアリスはそれを知ろうとしない。」



「お前の言いたいことは分かった。それで?なぜ私に?」


「なぜって…。ハハッ!ツォンはとぼけるのが下手くそだなぁ〜。」


「…帰るぞ。」

「うそうそ!ゴメンって〜。」


両手を合わせながら私の背中に謝り続ける男を振り返ることもなく私は歩き出した。


それはまるで


“その場から逃げるようだ。”


そう思い、悔しさで足が止まった。




「…私は、お前とは違う。」
「知ってるよ。“私には私の立場がある”だろ?」



そう。
私は≪タークス≫で
彼女は≪古代種≫


彼女は…

彼女は――


「まったく、エアリスもツォンもブレーキが利きすぎるんだって。」




「お前は利かなさすぎるんだ。」

「そうか?」


「そんなことだと、いつか事故を起こすぞ。」

「へーき、へーき!ブレーキ担当ツォン。アクセル担当、俺!」

「何だソレは?」

「サポートは任せた。んで、おいしいとこは俺に任せろ!」


呆れて振り返れば、ザックスが大きく笑っていた。










「あとはヨロシクな。」






























































































数年後、笑顔が印象的だったソルジャーは、この世に別れを告げ、
奴が最期まで気にかけていた彼女はあの花畑を後にして、水の底へと還っていった。








彼女は最期、叫ぶことが出来ただろうか…。
彼女は言うことが出来たのだろう…。





奴はもういない。














分かりきってる答えが怖くて私がソレを言いたくなった…。

















2013 03 09







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