イイ





ライフストリーム。



この中でまだ意志を持って存在し続けている俺にとってココは…







(まるで監獄だ。)



自己完結の世界。


あの子を助けたい


でも俺の持っている時間と、
あの子の持っている時間。


その二つが合わさっていた夢のような時間は――。








終わった。



きっとアイツが守ってくれるよ。


キミの好きなアイツが守ってくれる。



大丈夫。





アイツはイイ奴だ…。





…自己完結の、世界。





そこにあの子が落ちてきた。


まるで…











(あの時の俺みたいに。)



「久しぶりだね?ザックス。」


「まぁ、俺はいつも見てたんだけどな?」



少し前まで生きていた彼女。

とっくの昔に死んでしまった“俺”



それでも未練たらしくキミが好きで。


本当に初めてだったんだぜ?





(本気の恋ってやつ。)



「ザックス?」


「人ってさ、恋が出来るのってせいぜい4、5年らしいぜ?」


知ってた?と眼だけで少しおどけた様に尋ねるザックス。


「ふーん、それで?」


「だからさ、良かったと思ってさ!俺あの時死んじゃって。」


エアリスは何も答えず、眼も合わせない。ただ真っ白な世界が広がるライフストリームを興味深そうに見回す。


「だって悲しいじゃん?俺さ、自信ないし。」

「私を好きでいる?」




「違うよ。」



ザックスの声は、











「俺が好きでいてもらえる。」



ひたすらに優しくて、悲しそうだった。


「クラウドって顔はカッコイイし、イイ奴だし、寂しがり屋でさ――」











「スッゲー魅力的じゃない?」


最高の笑顔の中に隠しきれない、困惑。


「信用ないね?」

「信用?何が?」


「私はあったよ?ずっと好きでいる自信。」





「5年前も、1年前も、昨日も今日も、明日も好きだよ?なんでザックス。決めつけちゃったの?」

「いや、だってほら、普通はさ、結構しんどくない?ましてや俺、死んでるし…。」



「ふふっ。ざーんねん!」

「…?」

「私、普通じゃないの。」


「――!。」

死人の“時”は動かない。
生きている者は死でしまった者では決して追いつけないような速さで変化し続け、




過去の物にされてしまう。



自分の大切な時間が忘れられ、過去にされてしまうぐらいなら…
















――自らの手で、ピリオッドを。




(そう思ってたのにな。)



「俺よりもエアリスの方が変わってないんだもんな〜。」

「難しいんだよ?」
「だろうな。」




目の前で、昔と変わらず笑ってくれる少し成長した少女。


「でも、クラウドのことカッコイイとか思ってたろ〜?」

「うん。だってクラウドはカッコイイもん!」


「だよな〜。エアリスは知らないかもしれないけどさ、俺だって結構モテてたんだぜ?」

「知ってるよ。」

「え?そうなの?」

「だから――」


思いがけずエアリスが全身でザックスへと飛び込んできて、バランスを崩したザックスは見事に尻もちをついたが、痛さは感じず、その代わりに腕の中で納まったエアリスからの優しくあたたかい唇への感触に全神経を奪われていた。



「え、エアリス?」

「今日からは、私のもの。」
「――っ!」


「クスクス。」


あなたのお陰で




「イイ女になったでしょ?」






アナタが
キミが




この身体を生かしてくれる。











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