戦状





世界は変わらない。


「このまえさぁ」

「?うん。」

「花を見つけたんだ。」

「どんなお花?きれいだった?」



「任務先でだったんだけどさ、なーんにもないところで誰もいないような場所、誰にも気づかれないような場所。そんな所に花が一つだけ咲いてた。」


「そっか…。」


「でも…」
「でも?」







「スッゲーきれいだったんだ。」




「俺もホントたまたま見つけたんだけどさ、なんつーの?確かに場所はあんまよくないかもしれないけど、その花のおかげで、その周りもなんか明るい気がしてくるような不思議な花でさぁ!」

嬉しそうに、夢中に話すザックスは、本当に楽しそうで


つられた私も笑顔で話を聞けた。



(ふふっ、よかった。)


「なーに笑ってんだよエアリス〜。ちゃんと聞いてる?」

「聞いてるよ?だから笑顔。ね?」


満足そうに笑うザックスに身を乗り出して、眼で続きを促す。

「その花さ、あんまサイズは大っきくないくせに、一回気づいっちゃたら目が離せなくってさ、ついつい見ちゃうような不思議な花でさ、」


「うんうん。」






「ホントそっくりだった!」
「そっくり?」




「そう、エアリスにそっくり。」

「わたし…?」


「他にないだろ?俺をそこまで夢中にさせるのって。」


「……。」






思いがけない言葉に、

(うれしい、うれしい、けど…)


同時に恥ずかしいし、顔が真っ赤になっているのが分かる。
そして自覚すればするほど、その勢いは止まらない。


「な?」

「??」


「四六時中、俺はエアリスのことばっか考えてんだ。」

「う、うん。」


「エアリスってば俺に愛されてるだろ?」

「もう!ザックスもういいよ!」

「なんでだよ!?」

「なんでって…」


「俺ばっかり好きみたいで不公平だ!」
「そ、そんなことないもん。」

実際、お花の話を聞いているとき、私はまるでザックスみたいなお花だなぁ。と思った。

でも…








今は恥ずかしさのほうが先に来てしまって





(なんか伝えづらい…。)


「じゃあ俺のどんなとこが好き!?」

「…な、ないしょ。」
「え!?なんでだよ?教えてくれたっていいじゃん。な?な?」






「教えない。」
「ちょっとで良いから。な?」






「ダーメ。」
「じゃあ例えば!例えばとかでもいいからさ!」







「例えば?」
「そう、例えば!」












「しつこくない人。かな?」
「……。」










「……。」
「……。」











「ぷっ…。」
「?」





「ふふっ!クスクスクス。ザックス面白いね?急に黙っちゃうなんて。」
「ムッ。だっってエアリスがいじわるばっか言うんだもんなぁ…。ちゃんとわかってる?俺の気持ち。」



ふふっ、ザックスが私を大切にしてくれていること、知ってるよ?


だって私は




ザックスと居る時でも、ザックスのこと考えてるんだから!

だから、ね…。









私はもどかしい。






世界は変わらない。
私の世界は変わらない。




昨日も、
今日も、
明日も、



去年、一昨年に見た世界と変わらない。






私は、ここでしかあなたを感じられない。
私は、ここで見るあなたしか知らない。







外はやっぱりまだ恐い。
空はやっぱり好きになれそうにない。










でも…。


「ねぇザックス?」
「んー?」


「一緒に空。見に行こうね?」
「モッチロン!必ず俺が連れてってやるよ。絶対にな。」






色んなあなたを知らないまま、季節が過ぎ去ってしまう方が












恐くてたまらない。


空の下。きっとザックスに伝えるから。
ザックスにも負けないぐらいの笑顔と一緒に


ザックスの知りたがってた答え。









だから――。











「楽しみにしててね?」


「おぅ!って……あれ??」










世界が変わる気ないのなら



私が世界を回してみるのも面白いかもしれないよね?








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