ない
しょ話
うわさ話が聞こえる。
ここのところ、教会に足を運ぶ人が増えた。
それも
「ねーここだよね!?あの黒髪のソルジャーの人がよく出入りしてる教会って。」
「うん!ここ!他にも見た子とかいるし間違いないよ。」
「ねぇねぇ会えるかな!?」
「初日から会えたら運命感じちゃうよねー!?」
「っていうかもう運命じゃない!?」
「えー!そしたらどうしよう!?」
──女の子ばかり。
「なーエアリス…」
一緒にお花を眺めてた男の子がこっそり話しかける。
だから私も声をひそめて、
「うん?なに?」
「あの人達が話してるのってにーちゃんの事だよな?」
「‥‥たぶんね?」
「にーちゃんって意外とモテるんだな…。」
「‥‥‥そうだね。」
最近、教会でお花のお世話をしてるとよく、女の人達がザックスを見にやって来る。
ソルジャー‥‥しかも1stのせいか、スラムの教会に出入りする彼は目立つらしく、ザックスがここに通うようになってから、うわさはあっという間に広がって、色々な女の人達が目まぐるしくやって来る。
色々なうわさ話をしては入れ替わり立ち替わり、
おかげで色々なザックスの情報を耳にした。
女の子が好き
出身地
身長
夢
ほら、今も
「やっぱりあの身長良いよね〜」
「なんか可愛いしね!」
「あー分かる!笑顔とかなんか可愛い!」
「私はやっぱりあの瞳が好きだなぁ。」
「どんな感じだっけ!?」
「色素が薄いのか、黒じゃなくって青っぽいの。」
「あーそんなだったかも!」
「他にもさ、体つきも良いし!」
「フツーにカッコイイよね!?ソルジャー1stだし!」
みんなの教会だし、お花をイタズラするわけでもない。
ただ好きな話をしてるだけ、誰の迷惑にもなってない。
なのに
なんか面白くない。
「エアリス面白くなさそうな顔してっけど、もしかしてヤキモチ?」
ヤキモチ‥‥?
「うーん、ちょっと違う気がする…。」
「じゃあどうしたんだよ?」
なんだろう?
このモヤモヤ…。
ザックスを好きな女の人達。
みんなザックスを褒めて、その話に頬を染めて、楽しそうにお話をする。
私は何が、
面白くないんだろう?
「‥‥不思議だよな。」
「なにが?」
「なんでみんな、にーちゃんの見かけばっかりなんだろう?」
──あぁ、そうだ。
「にーちゃん、良い奴だよな?」
「‥‥‥うん。そうだね。」
彼女達は誰も彼も、ザックスの見かけの話だけ。
見かけが良い人なんてきっと外には沢山いるんでしょ?
ザックスの良さはね?
見かけだけなんかじゃないんだから!
面白いし
優しいし
あったかいし
なのに
とっても子供で大人。
それを誰も知らないで、見かけだけでザックスを評価されるのが
面白くない。
だって、
ちゃんとザックスのこと知らないでしょ?
ちゃんとザックスのこと見てないでしょ?
でも
彼女達の知らない、ザックス。
(私は知ってるんだし、)
(いっか!)
「ふふっ。」
「‥‥エアリス、なんで急に嬉しそうなんだ?」
「内緒。」