「なぁ‥‥。」
「なーに?」
「俺さ、」
「うん?」
「エアリスのこと好きだぜ。」
ザックスの告白とは裏腹にエアリスは肩を揺らして笑った。
「クスクス、またそれ?」
「そう。またこれ。ドキドキした?」
エアリスは可笑しそうにコロコロと笑い続けたまま
「しなーい。だって、何回目?」
そう言って、指折り数えてみせる。
「まだまだ言い続ける予定なんだけど、聞き飽きた?」
「嬉しいよ?でも、何で?」
「魔法。」
ニヤリと言ってのけた顔はいつもよりも得意気だった。
「魔法?どんな?」
「エアリスが寂しくなるような!」
「‥‥‥?私が寂しくなるような?」
ザックスの笑顔が揺るぎない。
聞き間違い、ましてや言い間違いなんかではないらしい。
「そっ!俺の“好き”を聞かないと“寂しい”って感じるようになるまで何度でも」
「クスクス、それって洗脳?」
「エアリスが寂しいって思ってくれりゃそれもアリだな!」
見事、
魔法はかけられた。
今日も陽の射すプレートの下、もう一度…
もう一度、魔法を待っている。
とけない魔法を。
終わらない魔法を。
祈っている。
瞼の裏で勝ち誇る彼が笑ってた。
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シェフの気まぐれ短編。
2011 09 21