神さま、私に
すごい記憶力を下さい。
『逢瀬』
いつものように私はお花たちの世話をして、ザックスがいつものように笑顔で眺める。
おかげさまで当たり前の景色になりました。
でも、最近はここに座って世話をしていると、いつの間にか気持ちだけが一人歩きをして、迷子になっている…。
「エアリス?」
「あ、なに?」
「さっきから呼んでたんだけど、なんか考え事〜?」
「ふふっ、うん。ちょっとね?それでザックスは何?」
「ん?あぁ、作業進んでないみたいだけどどうしたのかなってさ…」
言われて見た足元のお花達は、来た時と変わりない状況で「まだですか?」と言わんばかりに私を見ている。
「どうしたんだ?エアリス最近、変じゃないか?」
「なんでだと思う?」
「なんで…、なんでかぁ。それって答えあり?」
「…あるよ。」
「エアリスのなぞなぞは難しいからな〜…。」
むむむむむっ…。と腕組み真剣に考えてくれる彼が
愛しい…。
「あのね?この前は、私が“また会いたい”って言ったでしょ?」
「ん?あぁ、そうだったな。」
「次は?」
「次?」
「どうしたら、次、会える?」
「どうしたらザックス、また来てくれる?」
「どうしたら、出来るだけたくさん一緒に居られる?」
たくさんの“どうしたら”が私を支配している。
「…エアリス、そんな事を考えてたわけ?」
「‥‥‥‥。」
言葉で肯定できなかったのは、私のワガママは彼を困らせるだけだって分かってるから。
でも否定なんかもっとできなくて、ただ黙って頷いた。
わしゃわしゃわしゃ…
「!?」
一瞬なにが起きたか分からなかった。
頭に響く擦れる音と、人の手の重さが気持ち良くって、乱暴ではあるけど頭を撫でられているだって気づいた。
その乱暴さ加減はザックスらしかったりする。
「な、なに?急に…」
「いや〜、エアリスは可っ愛いなぁってさ!」
そう言ってザックスは、顔をくしゃくしゃにして笑ってた。
ふふっ、どっちの誰がかわいいって?
「なぁエアリス?」
「なに?」
「理由なんか無くったって俺は会いに来る。」
─────胸が‥‥。
「ってかな?約束したから来るんじゃないぜ?会いたいから来たんだ。俺の自由意思!」
きゅーーっと音をたてた。
「ザックス…。」
「もちろん、これからだってそうさ!」
「これから?」
「そうさ!エアリスが悩んだり考えたりする前に、俺はもう会いに来ちゃってるって!今日だってそうだったろ?」
人の頭を撫でるのは乱暴だったり
自分の意思を突き通すのは強情だったりするのに
「俺に任せとけって。」
人の手を引くのは優しいんだから…
「うん、お願いします。」
参っちゃうな〜。
「よっし!じゃあエアリスには、おとぎ話の連中もヤキモチ妬いちゃうぐらいの“めでたしめでたし”よりもっとすごいハッピーエンドを見せてやるよ!」
「クスクス、期待してるね?」
神さまお願いです。
私にすごい記憶力を下さい。
この人との出来事、ぜんぶを覚えていられるような
すごい記憶力を下さい。
会えない時でも、彼に逢えるように。
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言うのは恥ずかしい。
でも、言わないのはもったいない。
だからそっと願う私の気持ち。
2011 09 13