「エアリスおっはよー!」
「ふふっ、おはよザックス。最近よく会うね?」
「おぅ!俺も、もうすっかりココの常連さんだろ?」
「クスクス。そうだね?最近ザックスの顔を見ないと落ち着かないもん。」
「お?実は気づかないうちに、俺に惚れちゃってるんじゃないの〜?」
───知ってるよ。
「ふふっ。どうかな〜?」
「まったく、エアリスは素直じゃないなぁ〜。」
ヤレヤレと肩を竦めながら歩き出したザックスが、椅子の前でくるりと振り返り、どかっ。と腰を下ろす。
少しずり落ちたところで一息をつくその姿は本当、すごく自然体で
それすらも
なんか、いいなぁ。
そう、思える。
「我が家みたいだね?」
「ん?うーん、それよりも落ち着くかもなぁ。」
「そうなの?」
「うん。エアリスがいるからな、ここには。」
本当
さらりと口にしちゃうんだもんなぁ。
「ふふっ、女の子には皆、同じこと、言ってるの?」
「あ!ひっでーなぁ。今の俺は昔の俺と違って、純情一途なの。わかる?」
ザックスが、私を大切にしてくれてること、すごく分かる。
“特別”だってこと、すごく伝わってくる。
そんなザックスに、私の気持ちは毎回毎回、舞い上がってしまう。
でも
「クスクス。本当〜?」
「本当、本当。俺を信じろって!」
これ以上は──…
「うーん、うん。信じよう、かな?」
「エアリス〜、ぜってぇ信じてないだろ?」
「ううん、ザックスのこと、信じるよ?」
「じゃあ、エアリスちょっと顔かして。」
ちょいちょいとザックスの手に誘導されるままに、顔を近づけたのは
やっぱり、さっきの言葉に舞い上がってしまっていたからだと思う。
「こう?」
少し、ウカツだった。
「そのままな?」
ゆっくりザックスの顔が近づく。
その見たことないぐらい真剣な顔は
──‥きれいだった。
「はい。」
「…え?」
「もう一回言ってみてよ。」
「もう一回?」
「俺を信じてるって。」
息のかかる距離に、眼を逸らそうとしたら
すかさずザックスに両手を捕まれた。
お願い。
これ以上は───…
「エアリス?」
「…えっと……。」
「エアリス、もしかして…」
「な、なに?」
「俺に、魅とれた?」
「もう!違いますー。」
照れ笑いでごまかしながら解放された両手でザックスを押し返す。
ザックスも私の赤くなった顔を見て、満足そうに笑う。
これは、どこかで見た景色。
そう。
私が彼に惹かれた、あの日と同じ景色。
でも、お願い。
これ以上は───…
近づかないで…。
これ以上、“私”に
近づかないで。
≪ピリリリリリ ピリリリリリ…≫
私の心に触れないで…
ピッ 「はい、もしもし?」
離れたくないと望んでしまう…。
-----------------
でも、きっともう手遅れ…。
2011 07 10