手を伸ばす。














届きますように、届きますように。と



手を伸ばす。




でも、目標物はもう其処には居なくて




それでもバカの一つ覚えのように



伸びきった腕を伸ばし、捕まえようとする。















届きますように、届きますように。
















目の前に広がるは、真っ白な世界。




追いかけようと身体を動かそうとしても



まるで力が入らない。
















届きますように、届きますように。


















今ならまだ間に合う。






この先の結末を俺は見たくない。知りたくない。














────この先…?




この先は一体どんな結末があるんだ?



分かるのは漠然とした、それでいてハッキリとした




















────‥絶望。

















届きませんように、届きませんように。

















どうせもう間に合わないのなら、







見たくない。
知りたくない。















ふいに香る、匂い。



なんだ?この────











安心感は‥。




ざわついていた気持ちが、スーッと落ち着いていく。



頭に気持ちのいい重みと、温もりを感じる。









あったかい気持ちになる────…‥















「あ。起きた?」




「…エアリス?」


「おはよう。クラウド」



‥‥ユメ?


ダルく重い身体をベッドから引き剥がすように起き上がる。



まだ靄のかかったような、ボヤけた頭で考えてみる。






何で…




「…何でアンタがここに居るんだ?」



宿は男女別々で部屋をとった筈だ。






「ナナキがね?クラウドならまだ部屋で寝てるって教えてくれたから。」



…それはここに居る理由になってない。





「ふふっ、クラウドの寝顔。見に来たの!」








「アンタ暇なのか?」


「もう!そんな言い方ないでしょ?」



「………。」


「おかげで、うなされてるソルジャーさん、見つけられたのよ?」


「うなされてた…?」


「覚えてない?」




「……あぁ。」



「う゛ーーーー!助けてくれー。死にそうだ〜。誰かー!!」



「…それ本当か?」

「うそ!」



自分のついた嘘にアンタ自身が一番笑ってちゃ世話ないと思うが…











何故か俺は安心していた。




「でも、うなされてたの、本当だよ?」



「起こしてくれたのか?」


「うーん、起こしたって言うよりは、起きちゃった?」





…なんだそれ?



「クラウド、寝ながら眉間にシワ寄せて、恐い顔しながら汗かいてたから、頭。撫でてあげたの。」







「もう、大丈夫だよ。って」




もう、大丈夫…?



俺はどんなユメを見ていたんだったか…。







でも、あの時感じた安心感は───…。











‥‥にしても、何でよりによって



「頭を撫でるなんだ?」



少なからず年上のアンタにされると






余計に年下のようで面白くない。






俺は子供か弟か?







「…昔ね?私が不安だったり、寂しかったりした時、優しく頭を撫でてくれる人が居たの。」



「………。」


「ふふっ、でもあの人、撫でかた、少し乱暴だったなぁ。」



「…気になってた奴か」



「…うん。優しくて、大きくて、あったかい手。だったんたよ?」




「…興味ないね」





「あれ?クラウド」

「何だ?」


「ヤキモチ?」


「何言ってんだ?アンタ」



「素直じゃないなぁ〜」





「勘弁してくれ」








「夢。怖かった?」



その言葉に何かを思いだしかけて、右手を見た。








何も無い。





「…覚えてないな。ただ、起こしてもらえて良かった、と思う。」



「ふふっ、なら良かった。」


最後に感じた、あの感覚。



心地いい温もり。
触れられた頭から全身に広がったあたたかさ。








ずっと触れていたい。




もう、ずいぶん昔に無くした、あたたかさ。





「よく見るの?その夢」


「そんな気がする。」




「いつも怖くなって目、覚ますの?」





「…あぁ。多分な」


「そう。」




「でも、俺はいつも目覚めた後、この夢を見れたことに」













「ホッとするんだ。」




「なんで?」

「分からない。」



俺はこの夢を見たのは初めてじゃない。
何度も見てて、いつも嫌な思いをするのに





起きた時、夢を見れたことに、ホッとする。










まだ、忘れてない、と安心する…。










何を?








「なぁ」

「なーに?」




















「もう一度、触れてくれないか」





「クラウド…。それ、口説いてる?」



「……?」



「ううん。なんでもない!」









アンタの触れてくれる手は優しくて


俺はそっと願う。













この次こそは、届きますように。












「ねぇクラウド?」



「?」


「お礼。なにくれる?」


「お礼?」



「起こしてあげたのと、これのお礼。」



「まだボディーガードの報酬をもらっていないんだが?」



「じゃあ、全部合わせて、たくさんデートしよう!うん。ね?」





「お任せしますよ。」















届きますように、届きますように。















次こそは












間に合いますように。











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久しぶりに、この二人を描きましたが楽しかったッス!クラウドはやっぱりヘタレが好きです(笑)

2011 06 20



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