テレビやマンガの中で




強くて、優しくて、格好良くって、みんなが憧れるようなスーパーヒーロー。



それが俺の理想の英雄像。





例えばさ、俺の友達とか、そうじゃないやつらとか全部関係なく




困ってるやつが居るなら、颯爽と駆けつけて助けちゃうような


スーパーヒーロー。







感謝されたい訳じゃないんだ。




ただ







誰かに必要とされるやつになりたい。






だからその為にも俺は強くなりたいんだ!



もっともっと強くなって、色んなものを守ってやりたい。





神羅ビルでソルジャーとして働くことは、俺にとって



夢だったり、憧れだったり






チャンスだったりする。




だからさ、










仕事のせいでエアリスと居られる時間が少ししかないことは残念だけど、仕方ない。





「ゴメン。もう時間だからさ、俺行くよ」


「そっか…気を付けてね?」

「おう。」



いってらっしゃい。とエアリスは笑ってくれるけど





声は寂しそう…。



「また来るから」




俺は俺の夢を叶える為、誓いを守る為には仕方ないと思うが













チクリとトゲが刺さる。









俺が居なくなった後、エアリスは一人教会で何をしているんだろうな…





いや




花の手入れも終わってるんだ。家に帰るに決まってるか…。










そんな事を考えながら、後ろ髪を引かれる思いを払うかの様に足早に会社へと急いだ。





もうスグで神羅ビルに着くという所まで来て今さらながらにあることに気がついた。






「ヤベッ…剣忘れた。」




…目的地はもう目の前。



でもアレがないとなぁ…。









「はぁ、仕方ない。戻るか…」













一度出て行った手前、なんとなく中に入りづらいんだよなぁ…。


もう居ないだろうとも思いつつ念のため、いつもと違って勢いで開けるんじゃなくって、ググッと力を少しずつ入れてゆっくりと扉を開けると──





(……へ?)


────居た。



一度、扉を閉めようとしたが…




「……?」


エアリスは一人花畑の真ん中で微動だもしないで立ったままで



…何かを祈ってるのか?







「何、してるんだ?」そう声をかけようとして俺は、ふと一つの考えが過った。














もしかして俺のため、なんじゃ…。






確信に近い自信があった。


そこまで察したのなら黙って見て見ぬふりをして去るのがベストなのかもしれない。




だから、ここで声をかけるのは野暮ってもんなんだろう。










でも、ここで声をかけちゃうのが俺。ザックス・フェア!




俺のために祈ってくれてる(かもしれない)女の子を知らんぷり出来るわけないだろ?




「エアリス…」



「ザックス!?びっくりした。どうしたの?」



「忘れ物。あのさ、エアリス今なにしてたんだ?」





「お願い事。ザックスが無事、早く帰ってきますようにって。ね?」



見られちゃったね?と照れたように笑うエアリスに、やっぱりな。と思いながらそっと笑い返す俺。





ん?




まさかとは思うけど…



「もしかしてさ、エアリス俺が出て行った後、毎回やってる?」




「ふふっ。バレちゃったね?」



二度目のやっぱり。



















──俺の理想の英雄像…





「…エアリス、俺が居ないと寂しい?」





──強くて、優しくて、格好良くって、みんなの憧れで

誰であろうと困ってるやつが居るなら、颯爽と駆けつけて助けちゃうような



スーパーヒーロー。






誰かに必要とされるやつになりたい。





そう思ってた。




違う。







違う。違う。違う。




ぜんぜん違う!












「‥‥‥‥‥うん。」


ほら見ろ!




目の前にいるじゃないか!



俺を…




俺だけを必要だと待ってくれてる大切な女の子。






その為に自分の出来る精一杯を精一杯がんばる、いじらしい女の子。






誰かじゃない。




何で俺が、俺の目の前のピンクのリボンを着けた愛しい彼女の助けになってやってなかったんだ!?



何で気づくのが今さらだったんだ!?






バカか俺?





「寂しい、けど…」


「けど?」




「ザックスの夢が叶う姿、私見たい。だからね?」



























「“寂しい”は、がまん!」



そう言って花の様に笑うエアリスは────













どんなスーパーヒーローよりも──カッコよかった。





「エアリス。」



「なに?」






「俺、仕事が長くなる時は今度から手紙書くよ。」



「手紙?」


「あぁ。メールじゃなくて手紙!しかも絵はがきのやつな。それでさ、同じ景色を見ようぜ!」



「同じ、景色…。」




わくわくする。



「そーだよ!それでさ、キレイだなぁ。とか触れてみたいなぁ。とかを違う場所で同じことを考えて、違う時間で同じことを感じる!」




今まで俺の思い描く未来には






俺しか、いなかった。




「うんうん。すごく楽しそう!」



でも




エアリスがいる未来を思い描いてみる。





それだけで





「もっちろん!楽しいに決まってるじゃない!!」




わくわくする気持ちが──







止まらない!














話が盛り上がってたら会社から「早く来い。」と急かす電話が鳴る。




慌てて剣を持ってエアリスに「いってきます!」って言ったら




「いっらっしゃい。気を付けてね?」



「おぅ!」




「ザックス。」

「ん?」



「手紙、楽しみにしてるね?」


「任せてとけって!」




久しぶりに俺を笑顔で見送ってくれるエアリスを見れた。




刺さったトゲが抜けていくのが分かる。







笑顔一つで俺を救うエアリスは、最高で最強の









スーパーヒーロー。











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シリアス風味?
ザックスは昔、近所のガキ大将だったに違いないと思います(笑)

2011 06 18




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