ザックスは私に


「いきなりだなぁ」

とか

「突然どうした」


って言うけど









「なぁ!エアリスって料理できるか!?」




ザックスも突然だと思う。



「どうしたの?突然」


「いやさ、エアリスって料理できるのかなって」







うーん、お料理。かぁ…








簡単なものなら出来ると思うけど、ちゃんとしたものは本。見ながらじゃないと無理、かな…?






「うーん…たぶん。」


「たぶん?」


「うん。少しぐらいなら時間、かかるけど、出来るよ?」

「マジ!?」


きれいな青の瞳をキラキラと宝石みたいに輝かせて、いかにもな“期待の眼差し”に


「で、でも!お母さんのお手伝いして覚えたの、ぐらいだよ?」


と、慌てて付け足して、みたけれど


「さっすが〜!」






「え?」

「そうだよなぁ。やっぱ女の子は料理できるもんなんだよな〜」









…ちょっと、遅かったみたい。









「えっと…ザックス、料理がどうかしたの?」


「うん?あぁ、実はさ、任務先でメシが支給される時とされない時ってのがあるんだ。」





「?…うん。」



「それで今月ピンチなんだよなぁ。なんて思ってたら、お弁当を広げた奴が居たんだよ。」





「ふふっ。経済的な人だね?」

「だろ?だから俺も見習って弁当を用意することにしたってわけ。」



「あ。それで料理?」


「そうそう!でも俺、料理なんてからっきし出来ないから教えてくれる人探してたんだけど…」



チラリと先の言葉を濁しながら、助けを求めるような眼で見られて、内心、ギクリとした。





「えっと…私も教えるほど、出来ないよ?」


「そこを何とか!」



そんな、神頼みみたいに、両手を合わせられても…









私もお料理、得意じゃないしなぁ。














「お金、そんなにないの?」

「ないの。」



ほらっ。と見せられたザックスのお財布は、お金の代わりにレシートが数枚、入ってるだけで













「ザックス、お弁当は材料。いるんだよ?」




涙声で「分かってるよ〜」なんて肩をガックリと落として見せるんだもん。














クスクス。
もう、しょうがないなぁ〜。



「ふふっ。わかった!いいよ?」


「本当!?」


「うん。お弁当、作ってあげる!」


「マジ!?やったぁ!助かる〜‥──って、えぇぇ!?」




「?どうしたの?」



「いや、どうしたのってエアリス。」


「うん?」




「弁当作ってくれんの…?」

「?うん。」




「マジ?」

「まじ」




「本当?」

「ほんとう」




「ウソつかない!?」

「クスクス。嘘、つかない。」








「‥‥‥。」




「‥‥‥?」



オウム返しの様な会話の後、少しの沈黙と間があって






「…ザックス?」



ザックスが、じわじわと拳に力を込めながらプルプルと奮えてたから、どうしたのかな?と思って顔を覗こうとしたら──…









「おっしゃぁぁぁあ!!」
「───!!?」



いきなりの大きな声にびっくりして、近づけた顔をいっばいに離して目をパチパチさせちゃったのは───






「ん!?どうした?エアリス。」



「…びっくりした。」





仕方ないことだったと思う。





「ハハハッ!悪い悪い。」


「どうしたの?いきなり」


「どうしたの?ってエアリスが、いきなりあんなこと言うから」

「あんなこと?」




「弁当を作ってくれるなんて嬉しいこと言ってくれるから、ついつい気持ちが抑えきれなくなったんだって!」


ニコニコしながら元気に答えてくれるザックスは、本当に嬉しそうに笑ってくれて───



「ふふっ、そんなに嬉しかったの〜?」


「もっちろん!なんてたってエアリスが俺のために弁当を作ってくれるんだからな。嬉しいに決まってるだろ?」





私も一緒に、ニコニコ笑顔。




「…あっ。なぁ、もしかして教えるのがメンドクサかっただけ、とかじゃないよな?」



「クスクス、そんなことないよ?ただ、教えてあげることよりもね?」


「…よりも?」



私の言葉に不思議そうに首をかしげるザックス。




きっと、男の人には分からないかもしれないけど






理由は簡単なんだよ?



























「女の子の憧れ。」


「‥‥憧れ?」



女の子なら、みんな一度は視る

























「好きな人にはお弁当、作ってあげたいものでしょ?」






ささやかな、夢。





「…マジで?エアリス。」



「うん。」







「‥‥‥‥。」








あれ…?




ザックス、さっきまであんなに笑顔だったのに、急に溜め息ついて、下向いちゃった…。



そのままガシガシと頭を掻くのは、ザックスの困ったりした時の、癖。









もしかして、ザックス──‥





「‥‥嫌、だった?」






「んー?いや、あのさエアリス…」



「…なに?」














「抱きしめていい?」

「───っ…!?」




















「あーぁ。早く次の仕事が入らないかなぁ…」


「ちょっとザックス!?」

「どうした?」










「私、“いいよ”なんて言ってないよ!?」



「ダメなの?」






「うっ…ダメ、じゃないけど…。」


こういう時、ザックスのその眼は卑怯だと思う。



“子犬のザックス”だなんて上手いアダ名だなぁ。なんて思ってたけど…




子犬はこんなにズルくない…。




「なぁエアリス?」


「‥‥?」




───‥でも




「目茶苦茶にスッゲーでっかい弁当箱持ってきて良い?」




この、やんちゃで育ち盛りな可愛い子犬の為──





「ふふっ、いいよ。」






しばらく、料理本とにらめっこする日が続きそう。




そんなことを思いながら、ぎゅっ。と抱きしめ返す。










『あなたとの恋が、私を変える。』








お料理は、教えるのも、作ってあげるのも、得意じゃない。







なのに









私の心は、踊りっぱなしなのだ。













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遅くなってしまい申し訳ないです。ごめんなさい。そして


一周年ありがとうございました!!皆様のお陰で持続性のない私が一年もザクエア愛を叫び続けられました!本当に感謝感謝です!!ささやかですが、以前アンケートさせてもらった結果の『ほのぼのザクエア』を描かせてもらいました。もしよければ持って帰ってやってください。そしてあわよくばザクエア愛を拡げましょう(笑)


楽しんでいただけたのなら、これ幸い。

2011 06 13



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