「ねぇクラウド、デートしよ!」










     『ソラニユメ』






「…何でだ?」

俺の答えにアンタはちょっとむくれて見せるが、



聞きたくもなるだろ。




ついさっき、この町に着いたばかりで、今やっと一息をつけるとベッドに腰を下ろしたところなのに…




何故、今わざわざ腰を上げて疲れた身体でデートだなんて…








まぁ予想はしてた。



「空がね?すっごく綺麗なの!」





俺には理解できない理由なんだろうな。なんてことは



「だからデートなのか?」



「?そうだよ?」



はぁ…




エアリスは決めてしまったらしい



こうなったら何を言っても同じか…



「分かった、少しだけな。」


やったぁ!と喜ぶアンタを見ると、悪い気はしないから不思議だ。



でもまぁ、小さな町なんだ。デートと言っても適当に、ぶらりと散歩をするぐらいだろう。





余計な荷物は置いていくか。



「あ。クラウド待って!」


「何だ?」


「剣、忘れてるよ?」


「…必要か?」


──‥デートに。




「だってクラウド、ボディーガードでしょ?」



「…。」




はぁ。やれやれ
どうやら、持っていくしかなさそうだな…。



立て掛けていた大剣を手に取り背中で持つ。



その様子に満足そうに微笑むアンタは何だか綺麗に見えた…。











  §   §   §








今まで立ち寄った町の中でも比較的この町は緑も多いし、特別高い建物もないせいか空も圧迫感なく見渡せる。



そんな町は空気も綺麗だった。


エアリスがその空気を胸いっぱいに吸いこむ。


「んーー‥。」


気持ち良さそうに伸びるアンタと少し後ろを歩く俺。






不意に、くるりとエアリスが俺の方へと振り向く。



「ねぇクラウド?」

「ん?」

「クラウドにとって、その剣って何?」



何、とは何だ?




「…剣は剣だろ?武器以外に何があるんだ?」


言った瞬間、背中の剣に重みを感じる。


そういえば、俺はいつからこの剣をこうして持っているんだったか…



「クスクス。ううん、そうだね。すごくクラウドらしい、意見だね?」




良いのか、悪いのか
それは、どう受け止めれば良いんだ?



大体アンタはいつも予測不可能な質問ばかりだな



きっと次だって





「じゃあ、クラウドは雲の上、何があると思う?」



な?



「…雲の上?」



必死に食らいつく俺。





と言っても…
何があるかって雲は雲しかないんじゃないか…?





……。







「さぁな。アンタは何があると思うんだ?」



「私はね?夢が広がってると思うな。それでね?そこには笑顔がある。」



笑顔…?



「太陽にも負けない、すっごく素敵な笑顔。」





今のアンタみたいなか?



「…。」






まぁ、いくら俺が考えてみたところで




アンタの考えになんて追い付けないな。




「クラウドは?夢ある?」


「‥‥‥。」




少し考えてみたが、何も思い付かず、俺が例の言葉を言おうと口を開いた時───‥


「“興味ない”はなしね?」


静かに口を閉じた…。





腕を組む。


思い出すために思考を自分の中へと向けるが








‥‥夢、か。



確かに昔はあった気がする。



けど…




「…忘れたな。アンタはあるのか?夢」


「ふふっ、もちろん!たーくさん、あるよ?」


沢山?
そんなにあるものなのか?夢って




「欲張りだな」


「そんなことないよ?全部ささやかな夢だもの」



「例えば?」





「うーん。…内緒!」

「内緒?人には聞いといてか?」


「でも、クラウドも話してくれてないでしょ?」



そりゃまぁ、な…



「それにね?私の夢、預けちゃったから…」


「誰にだ?」









「“空。”」




……そら?



「だから“雲の上に夢が広がってる”か?」



「うーん、それもあるんだけど、ね?」






…またか




アンタが空の話を振るくせに、いつも言葉を濁す。





そして







ほらな?






いつも寂しそうな顔をするんだ。




「あ。でも…」

「なんだ?」


「たくさんある夢の内の幾つかは、クラウドに叶えてもらえたよ?」


俺が…?


「ありがとう、お陰で“綺麗な空”思い出せた。」




綺麗な空、か。


「アンタは空が好きだな。」














    「うん。」


アンタが一度、静かに力強く肯定する。






「やっぱり、私は今も“青空”が好き。」




その瞳はこの空のように、一転の曇りもない







彼女の、ゆるぎない想いを物語っていた。



「アンタは空でも飛びたいのか」



(あぁ。きっとこれは──‥)










それ以上は面白くない答えしか出てこなさそうだった俺は





慌てて思考を止める。



「ふふっ、前に約束。してくれたでしょ?飛空艇に乗せてくれるって」



忘れちゃったの?とアンタは聞くけど




もちろん覚えてる。


忘れるわけがない。



「なんでそこまで空にこだわる?」


「ふふっ、こんなにあったかくなれる場所、他にはないから」



つられて空を見上げる。




見上げた空は、どこまでも青くて





確かに、優しかった…。







───悪くない気分だ。



思わず、フッと鼻先で笑う。



「たまには良いかもな、晴れた日に出掛けるのも。」


「でしょ!じゃあ、またデートしよっか?」



「“出掛けるのも”とは言ったが、“アンタと二人で”とは言ってないが?」



「もう!クラウドのいじわる!」


「いじわるで悪かったな。」

自然と口の端が持ち上がる。




俺はもう一度、空を見上げた。





確かにエアリスが惹かれるのも分かる気がした。




(───…俺は昔、憧れていた気がする。)






(この青く、自由な空を──。)






チラリとエアリスを見れば、俺と同じように空を見上げていて




何故かそのまま、この空にアンタを持っていかれそうで、それが怖くて、俺は…










アンタに手を伸ばそうとした。








でも、そんな馬鹿げた考えの自分が恥ずかしくなって上げた手を下ろしかけたとき──‥



「さぁクラウド、行こ!」



アンタが俺の代わりに手を取り、駆け出す。




「おい。そんなに引っ張られたんじゃ危ないし、走りづらい。」



「でも、たまには良いでしょ?こういうのも」


アンタがニコリと笑う。



本当、毎度毎度アンタの行動力に俺は救われてるな。



「ふふっ。ねぇクラウド?今日は楽しかったね!」














「…あぁ。」




───…そうだな。





例え、空の近くに行く為だったとしても




アンタが、空を飛びたいと望むなら








俺が、その望みを叶えてやろう。



「楽しみに待っててくれ。」

「え?なに?」







それが俺の夢になる。











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くるみ様!お待たせしました。8000hitリクエストの『本編のザク←エア←クラ』です(*^^*)
すごく楽しいリクエストだったのに、ちゃんと期待に添えられてるか不安で仕方ないです(;_;)でも感謝の気持ちとくるみ様への愛は詰め込ませていただきました!相互記念もはりきって描かせてもらうので、どうぞもらってやって下さいm(_ _)m

8000hit&リクエスト本当にありがとうございました!

2010 05 01


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