「まぁたサンプルが居なくなったそうだぞ」


「何度目だ?」


「さぁな。しかし子供の方のサンプルは、しょっちゅう行方不明だな」


「まぁアレはまだ子供だからな」



「しかし、あのサンプル、子供だからと大目に見ていればこの有り様だぞ!?」

「仕方ないさ、アレは貴重なサンプルだ。死なれてしまうよりいい」


「子供の方だけ鎖で縛ってどっかにくくり付ければ良いんじゃないか?」


「いいなそれ!探す手間が省けるぞ!」


「まぁ探すのはタークスだがな。」


「使いたいときに居ないのは面倒なんだよ」



「まぁ確かにな。」






また、









大人の人達が好き勝手、言ってる。





誰も私に、気づかない。
こんなに近くに居るのにね?





もう、耳にタコ。





“アレ”“あの”“子供の方”“サンプル”




私はそんな名前じゃないもの。






私の名前は“エアリス”











“エアリス・ゲインズブール”




お父さんとお母さんにもらった素敵な名前がある。








あの人達にそう呼んでほしい訳じゃない。






けど、私を私として見ない






あの眼がスゴク嫌。





あんな眼で見られるぐらいなら、いっそ消えてしまいたい。




本当に一つの道具になってしまった方がきっとマシ。






あの眼で見られても何も感じず





ただ、私が使われる番を待つだけの道具。










でも














そんなの嫌に決まってるじゃない?








だから、無駄だと分かっていても











抵抗してみるの。










それが、唯一









本当の道具と“エアリス”の違いで、境目。









だから、あんな道具と私の区別もつかないような人達に見つけられるわけないの。





ふふっ、きっと新羅の人間じゃ無理ね?







でも、













そろそろ、お母さんが心配するといけないし、お部屋に戻ろうかな?






私の出来る抵抗なんて、こんなもの。





なにも結果なんて残さない。








分かってる。







分かってるんだけどね?









でも、誰も私を見つけられないなんて











イイ気味!って思ってやりたいの。















「エアリス」


いきなり名前を呼ばれてビクッと肩を大きく動かして、おそるおそる振り返ると、よく知ってる人が立ってて







「‥‥‥ツォン。」






「やっと見つけたぞ」





私に手をのばしてくれた。



「なんで?」



「あちこち探したからな、さぁ一緒に戻ろう。イファルナも心配するぞ?」


「ツォン、誰かに言われて探してたの?」



「?いや」








「知ってる顔が居なくなれば心配なのは当然だろう?」









ツォンはあの眼で私を見ない。




私のこと、ちゃんと“エアリス”って呼んでくれる。






「だから、ツォン見つけられるのかな?私のこと」




「?」








「ほら、ツォン。ぼーっとしてないで?早く戻ろ。お母さん、心配するでしょ?」



「あぁ。しかし、心配させる原因を作ったのは君だぞ?」


「もう、ツォンは細かいな〜。女の子に嫌われちゃうよ?」




「別に構わないさ」



「まーた、そんなこと言って〜。ほら、私が手、繋いであげるから、いじけないで?」



「いじけてない。」





ツォン、冷たくそう言うけど








繋いだ手はしっかり、あったかくて





「ふふっ、私はツォンのこと、嫌いじゃないよ?」



「そうか、なら何も問題ない。」









新羅も悪い人ばかりじゃないのかも?




って思わせてくれる。







「ツォンって、なんか変。」

「君ほどじゃないと思うが?」




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -