───‥ピピピピッ



‥‥‥げっ






「‥‥38.7℃‥」



はぁ…

どーりで身体がダルいわけだ…









   『ひだまり』











「あーーー‥。まじかよ。」


今日は折角の休み、しかもエアリスと8:00に教会で待ち合わせしてんのに…



頭はぼーっとするし、喉は痛いし、なんか熱いのに身体の芯は寒ぃ。











































はぁ‥













今、何時だ?




ザックスは重い頭を持ち上げて時計を確認した。






「‥‥7:50過ぎ‥」




最悪だ。



待ち合わせまであと5分ちょいって














無理だろ。






エアリスもう家出てんだろうなぁ











教会、行かなきゃな…
















‥‥‥‥。































ザックスは、いまだにぼーとする頭でなんとか身体を動かし、携帯の画面を見た。

「げっ!8:00過ぎ!?まずい!急げよ、俺。」


ザックスが、がばっと起き上がり、布団を飛び出た、ちょうどその時

───ピンポーン。



…誰だよ、こんな時に



「‥‥はーい?」


「私だ。」


「‥ツォン!?」


「あぁ。」



ザックスは不思議に思いながらも扉を開けると、やはり目の前には黒いスーツでお馴染みのタークスのツォンが立っていた。




「どうしたんだ?」


「お前こそどうしたんだ?今日は8:00に待ち合わせしてたんじゃないのか?」




「‥‥なんでツォンが知ってんだよ?」



「色々とな。」


「ふーーーん、あっそ。俺にも色々あるんだよ」



「そうか。」


「何しに来たんだ?」



「差し入れだ。」


「差し入れ?」


ザックスは眉間に少しシワを寄せツォンが差し出してきた小さな袋を受け取った。



「それと伝言だ。」


「伝言?誰から?」




「“無理しないで、早くよくなってね?”だそうだ。」




「え!?エアリスから!?」



言うが早いかザックスは急いで袋の中身を確認した。




「‥‥風邪薬だ。」


「確かに渡したぞ」





「あ!ツォン!ちょっちょっと待てよ!」



「なんだ?」




「何で!?」


「何がだ?」



「何でエアリス…」



「フッ‥私もこの眼で見るまでは俄には信じられなかったがな」





────‥




「ごめんなエアリス。また明日!明日はゆっくりデートしようなー!」



「ザックス、気を付けてね?」


「任せとけって!」
















「行っちゃった。」


「仕事だ仕方ない。」


「ツォン。‥‥うん、そうだね。ただザックス、大丈夫かな?って」


「大丈夫?何がだ?」


「ザックス今日、2回も咳してた。それに手もいつもより少し、熱かった。」







「‥‥アイツが風邪を?」


「多分、ね?」



「想像つかないな。」


「ふふっ。ねぇツォン?」

「なんだ?」



「明日ね、待ち合わせの時間になっても、ザックス家に居たら、渡してほしいものあるの。」



       ‥────








「よく、気づいたなエアリス。」





俺自身今日、起きようとした時に初めて気づいたぐらいなのに





昨日のうちに気づいてわざわざ風邪薬まで買ってくれてるなんて…









「‥ん?まさか一緒に買いに行ったのか?」




「‥‥‥。」


「行ったのか!?行ったんだな!?」


「誰のせいだ?」


「‥‥うっ。」



「さっさと薬を飲んで寝ていることだな。」



「あ、あぁ。ツォンもサンキューな」






ザックスはドアを閉め、よりかかり、背中で遠ざかる足音を聞きながら思わず、ニッと笑った。






(なんか、風邪薬を貰ってこんなに嬉しいのって初めてかもな‥)




「よし。薬飲んだら少し寝るかな」















   §  §  §







エアリスは今日も朝から一人、黙々と教会の花達の手入れをしていた。




「うん。今日のお手入れ、おしまい。」








エアリスは立ち上がり教会にある唯一の出入り口である扉の方を見る




「もう、お昼もとっくに過ぎちゃってるし、ザックス、やっぱり風邪だったみたい。ちゃんと薬飲んだかな?」




「もちろん!」


声と共にエアリスは後ろから伸びてきた手に抱き寄せられ、驚きの声をあげた。

「きゃっ。ザックス!?」




「エアリスお待たせー。」



「お待たせって…ザックスどうやって入ってきたの!?」


「おいおい、俺はソルジャー1stだぜ〜?こそっり忍び寄るのなんて朝飯前。」

「なんで、わざわざ忍び寄るなんてするの?驚くじゃない」





「ははっそれが目的だからな。エアリスが風邪薬で驚かせてくれたから、それのお礼」


「ふふっ、なーに?それ変じゃない?」



「大成功!だろ?」



「クスクス。うん、そうだね。それよりザックス、風邪は大丈夫なの?」


「いやーさすがエアリスがくれた薬だよな。効果覿面!少し寝たらもうバッチ…ゴホッゴホッ。」



ザックスのタイミングのよすぎる咳にエアリスは肩を揺らして笑った。




「風邪、まだ治ってないんでしょ?」



「うーん、まぁな。でも朝起きたときよりずっと良くなったんだぜ!?」




「本当〜?」

「本当、本当。それにさ、折角のエアリスとのデートの日に部屋で一人寝てるなんて勿体ないじゃん?」



そう言ってザックスはエアリスの近くの椅子に腰をかけた。



「でもザックス、いつもより身体、熱かったよ?」



「そうか?いつも通りだろ」





「それになんか、つらそう。」



「そんなことないって。それよりデートしようぜデート。」








「‥‥うん。」






「あー‥エアリス今日の花の手入れは良いのか?」






エアリスが大きく首を横に振り花の方に振り返った。


「今日のは、終わったの」





「そっか。」


「‥‥。」





────‥




「ねぇツォン?」

「どうした?」


「ザックスって一人暮らし?」


「アイツは会社の寮に住んでるからな。一人暮らしと言うか分からないが、一人部屋ではある。」



「そっか。部屋に、ひとり‥」


「どうかしたのか?」



「ううん。なんでもない」






      ‥─────




「ねぇザックス?」







「‥‥‥。」





「ザックス?」



「あぁ、悪い悪い。ぼーとしてた。」





「やっぱり、体調悪そう。顔だって赤くなってるよ?」

エアリスはザックスの隣に腰をかけ、心配そうにザックスの顔を覗きこむ。


「へーきへーき。エアリスと居れば俺ってば元気になれるんだぜ?俺にとってエアリスが一番の薬なんだ」




「‥‥‥。」


「あら?エアリスさん?ここはさ、照れちゃうぐらいの…」

「ザックス。」


「うん?」




「風邪の時は、横になるのが一番。いいよ?」






「‥‥うーん、まぁかも、な。でもさー俺‥」


「だから、はい。」





「ん?」



「膝、貸してあげるから。ザックス、横になるといいよ?」








「え‥?いいの!?」


「うん。椅子に直接寝るよりは、マシでしょ?」


いや、マシって言うか…











やばっ。熱上がるかも、俺‥‥。





「どうしたの?」


「あ、いや、‥‥‥じゃあお言葉に甘えて」


「うん、どうぞ。」





「‥‥お邪魔します。」
















(──‥ーあ。)




(エアリスの匂いが、すげー近い。)





(っていうかエアリスの顔が近すぎて眼が開けられない。)





(恥ずかしくて直視できないとか俺、情けないよなー‥)












その時だった。




ザックスは自分の額にヒヤリと優しく滑らかなものを感じた。





(エアリスの、手‥?)

















───‥気持ち良いな。















不思議だ。



暖房の効いた部屋よりも


風が通り抜けるような教会の方があったかくて。




ふかふかの布団よりも


エアリスの手の方が気持ちいい。












ここは、なんて













こんなにも心地良いんだろう‥。





すごく、満たされる。








「なぁエアリス。」



「なーに?」









「俺、エアリスのことが好きだ。」




「な‥‥なに?急に」





「ありがとな」



「‥‥う、うん。」




エアリスが俺と同じように耳まで真っ赤にして小さくうなずいた。









君といる、いつもの場所。





笑って、しあわせ。











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おかげさまで6000hitありがとうございます!ありがとうキャンペーンということで“フリー”です。お持ち帰りしてくださる方どうぞ可愛がってやってくださいm(__)m

一応ほのぼのを目指して頑張ったのですが、割かしうまくいきましたかね…?

2010 03 14


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