「もしもーし。」
「ぅん?」
「あっ!気づいた?」
視界がぼやけていて差し込む光を背に誰かがこちらを覗きこんでいるのがわかったが、記憶も定かでなく自分がどこに居るのかすら検討もつかなかった。
「…お城?」
「残念。スラムの教会。」
「王子様?」
「ははっ。はずれ、俺、エアリオ。」
エアリオと名乗った青年は光が射しこんでしまってる天井を指差した。
「君。空から降ってきたんだよ?怪我ない?」
言われて、あー。と思い空から降ってきた少女は立ち上がり自分の身体を見回した。
「うん。大丈夫みたい」
「良かった。」
「ありがとう私、ザックネ。貴方が起こしてくれたの?」
「キス、じゃないけどね。もしもーしって言ってた。」
笑いながら青年は冗談混じりに答えた。
「ふふっ。ありがとう。何かお礼させてよ!」
「えっ!?いいっていいって。本当何もしてないからさ。」
「そうわいかないわ!うーん。そうだ!お茶でも付き合ってあげる。」
「何だそれ?変な奴。」
“変な奴”なんて言われるとは思わなかったザックネは少し大袈裟に項垂れて見せた。
そのおかげで自分の足元の存在に初めて気がついた。
「花?珍しいね。」
自然と笑みがこぼれ、自分自信に少し驚いた。
「だろ?ココにだけこうやって花が咲くんだ。」
少し屈み花達を見ながら嬉しそうに話をするエアリオの顔はとても優しそうだった。
すべてを包んでくれそうな笑顔。
そんなエアリオの横顔を見たザックネまで嬉しさを覚え、優しい気持ちになっていた。
「お礼ならこいつらに言ってあげてよ。」
「え?」
「怪我、しないで済んだろ?」
!!
言葉の意味を理解できたザックネは身体が瞬間凍りついたのが自分でも分かった。
脳裏には先程の花を見つめるエアリオの笑顔。
目の前にはよく見ると所々に折れてしまったり潰れてしまっている花があった。
「ご、ごめんなさい。」
「ん?なんで??」
「だって、エアリオが大切にしてる花達を傷つけてしまって私」
「ははっ。それは気にしなくて平気。言ったろ?怪我なくて良かったって。」
「優しいね。」
「普通だよ。」
「…そっか。普通…か。」
「どうかした?」
「ううん。ただ最近普通からはほど遠い生活を送ってるなって。」
「花を見て笑顔になるなんて忘れてたな〜って。」
「どうよ?」
「うん。悪くないわ。」
答えたザックネの顔は笑顔だった。足元にある花達にも負けない人を明るい気持ちにしてくれる様な暖かい笑顔。
そのザックネの笑顔を見たエアリオは彼女のとは違う意味で確かに普通じゃないなと思い自分でも気づかないうちに優しく微笑んでいた。
「ねぇこの花たちはどうするの?」
「どうするって?」
「例えば売るとか」
「売る?」
「そう!そしてお金にかえるの。沢山の人に売れたらミッドガルは花でいっぱいになるよ。」
「花でいっぱいか…。」
「そう!ミッドガルはお花でいっぱい。お財布はお金でいっぱい!どう?」
「ミッドガルはお花でいっぱい。お財布はお金でいっぱい、うん。面白いな。」
「本当!?」
「うん。本当。」
「じゃあ、私も一緒に売ってあげる!」
「一緒に?」
「そうよ。起こしてくれたお礼!」
「お礼はお茶なんじゃなかった?」
「だって、エアリオが変なやつって言ってたし。」
「あれ〜?気にした?」
意地悪そうな笑顔を浮かべてエアリオはザックネとの会話を楽しんでいた。こんな風に誰かとの会話を楽しむなんて少なくても自分が思い出せる記憶には無かった事だった。
「べ、べつに気になんかしてないわ!うーんじゃあ出会いの記念に約束!」
「出会いの記念に約束って?」
「せっかくエアリオとこうして出会えたんだからまた会うための約束。」
「一緒に花を売る事が?」
「そうよ。一緒に花を売るためにまず、ワゴンを作るの。そのための材料を集める日も必要だし組み立てる日も必要。あと試し売りの日もね!」
ニコニコしながら楽しそうに話をするザックネを見ていたら段々エアリオも気付けばその提案にワクワクしてきていた。
ザックネはエアリオが忘れていたことを思い出させてくれる。エアリオにとってそれだけでも自分の中で目の前の少女が特別な存在に思えた。
「うん。そうだな。あと、花を売る場所の下調べもしないとな。」
「それ良いね!」
キィ…。
その時、不意に教会の扉が開く音がして2人して振り返り見てみると扉を開けて2人組が入ってきていた。
「お元気ですか、と。」
「また来た。何度来ても同じだって。」
「そう連れないこと言わないでほしいわね、と。」
「仕方ない仕事よ。」
「えっ!?レミにルーコ!?何で??」
「ザックネ知り合い!?」
「えぇ。同僚…かな?一応」
「私たちはエアリオのおにーさんに用事があるのよ、と。」
「だから、答えは同じNo!帰ってくれ!!」
「何かよく分かんないけどエアリオが断ってるんだから大人しく帰りなさいよ。」
じゃないと、と言いながらザックネは腰に付いていた剣を構えて2人を威嚇した。
「私たちは戦う気はない。」
「ふぅ、まぁ分かっていた答えよ、と。」
2人は言ってレミのほうはヤレヤレという感じの態度で振り返り教会の扉を開けて出ていった。
「それじゃあまた、明日お邪魔しますよ、と。」
扉の閉まる音がやけに耳に響き残った。
「エアリオはあの2人とどういう関係?」
「…ザックネこそ何で知り合いなんだよ。」
エアリオの言葉に刺を感じつつも先程と同じ「同僚みたいなもの」だと答えた。
「みたいなものってなんだよ?ザックネもアイツ等と同じか!?」
「ちょっと待って。何でエアリオ怒ってるの?」
「……。」
エアリオは答えなかったが代わりに疑いの眼差しでザックネを睨み付けた。
(私の好きな瞳が…消えちゃった。)
「ごめんなさい。」
ザックネはエアリオの瞳が自分の好きな瞳じゃなくなってしまった事が悲しくて訳も分からずに謝ってしまっていた。
「本当に何も、分からないのか?」
「えぇ。」
「……そっか。ごめん睨んだりして。」
「ううん。その、本当にどうしたの?」
「俺、神羅が嫌いなんだ。神羅の全部が。」
「そう。」
ただ沈黙するだけの時間が流れていた。静かすぎてうるさいほどの沈黙だった。
「好きだよ。」
「えっ?」
「神羅は嫌いだ。でも、ザックネは好きだ。」
「本当!?」
「あぁ。」
「じゃあまた遊びに来ても良い!?」
「いつでも待ってる。」
「ありがとう!」
「次はちゃんと、扉から来いよ?」
「ふふっ大丈夫よ。」
「楽しみにしてるから。」
「うん。必ず来るわまたねエアリオ。」
『ボーイ・ミーツ・ガール』
1人の少女と1人の青年は衝撃的な出会いかたを運命的にした。
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まずは出逢い編です。
ザックスが乙女過ぎてキモイ&みんな名前が安易…。ですがあえてこのままで突っ走ります!誰もついてこれない自己満の世界へGoGoGo!!!(≧∇≦)/
2010 03 30