「あ、居た!おーい。ツォン!!」


「なんだ?騒々しい。廊下は静かに歩…」
「なぁ!!」







「…なんだ」


「エアリスの誕生日って知ってるか!?」




「2月7日だ。」


「くっそぅ。次だな。」



そう言ってザックスは私の前からあっという間に走り去っていった。







‥‥意味が分からん。






まるで台風だなアイツは。





慌ただしい奴だ。まぁ今に始まったことではないがな




いちいち気にしていても仕方がない。
















しかし、迷惑なことにそんな事が暫く続いた…。








「ツォン!」


「何か用か」


「へっへ〜。」


「…なんだ」


「お前エアリスん家知ってるか〜?」



「周りに花が沢山咲いてる赤い屋根の家だ。」


「げっ!行ったことあるのか!?」







「…お前は私を何だと思っているんだ?」


「何って…なんだ?」


「お前は気楽だな。」



「よくわかんねーけど、まだ負けじゃないからな!」


「…負け?」


私が口にしたときには既に奴は目の前から消えていた。




なんなんだアイツは…












「ツォンー!」



「‥‥‥。」



「お前さ、エアリスのかーちゃん知らないだろ!?」



「エルミナがどうかしたのか?」


「げっ!?またかよ〜…」





まったく最近コイツはなんなんだ。


肩を落としたいのは私の方なのだが。



「じぁさ、こういうのは?」

「なんだ」


「うーんそうだな…エアリスの好きな食べ物とかは!?」


「昔のか?今のか?」


「マジかよ…。もういい。」


「ザックス何が目的だ?」


「…よし!今度こそ負けないからなー!」



自分で言い終わる前に奴は私の目の前から去って行った。




「全く話を聞かない奴だ」




‥‥一応アイツは人間の筈なのだが




本当に中身まで犬になったのか?













いや、犬に失礼だな。




にしても、ここ数日ずっとこんな調子だ。


何が目的なのかハッキリしない。






…エアリスに何か言われているのか?



毎度毎度エアリスの話を勝手にして勝手に走り去る。





今度、一度エアリスに聞いてみるか…











そういえば…















「しばらく会っていないな…」



そこまで考えて自分の腕時計を確認すれば、





次の仕事まで余裕があった。





最近、何かと忙しくて教会から足が遠退いていたからな…




ちょうどいい。様子を見に行くついでに聞いてみるか。





























「エアリス居るか?」



「あ。ツォンなに?」





「…元気だったか?」


「神羅の人間に心配される覚え、ありませんー。」



「フッ。元気そうだな。」

「そんなことのために来たの?」




「いや、一つ聞きたい事があってな」


「聞きたいこと?なに?」




「ザックスのことなんだが…」



「あっ。」


「なんだ?」


「ツォン。ザックスと何かあった?」


「どういう意味だ?」


「なんかね?最近ザックスによく聞かれるの。私のこと」


「‥‥ほう。」


「誕生日とかお母さんのこととか…あと──」




「家のこととかか?」



「なんで分かったの?」



本当に何が目的なんだアイツは…



「でね?さっき“ツォンが知らないようなこと教えてくれ”って言われた。」





私が知らないようなこと?



なぜだ?



「で?なんと答えたんだ?」





「“うーん、わからん”」



「そうか。ザックスはどこに居る」



「ザックス“じゃあツォンがなに知らないか聞いてくる!”って言ってどっか行っちゃった。」














頭が痛くなってきた…。




アイツの考えることは理解できないな。





「ツォン?頭おさえて、痛いの?」



「‥‥いや、大丈夫だ。」





「多分アイツは神羅ビルだろう。どうせすぐに帰ってくる。ココで待たせてもらっても?」



「うん。構わないよ」



「すまないな。」




私がそう言い終わるか終わらないかというタイミングで




「あ゙ーーーーーーー!!!!!」



───噂の台風がやってきた…。





「なんでツォンがここに居るんだよ!?」



すかさずザックスが私とエアリスの間を割って抗議してくる。





「別に」


「何の用だよ!?」


「ザックス、どこに行ってたの?」


「神羅ビル。ツォンならそこに居ると思ってたのに居ないから諦めて帰ってきたらココに居るんだもんな。」




ザックスが私の方へ振り返ると、いっちょまえに腕なんか組み


「何の用だ?懺悔か?」と言い面白くなさそうな顔をした。






ザックスにしては珍しく気のきいた嫌味だな。




「あいにくだが懺悔するような心あたりはないのでな。」

「どーだかねー?」


「それよりザックス」


「んー?」



「最近のお前の行動の目的はなんだ?」



「目的?それはツォンの知らないエアリスを知る為に決まってるだろ」



「なぁエアリス」とザックスが振り向きながらエアリスに話しかけたが、



「そうだったの?」















────ふっ。撃沈だな。



「ツォンお前今、笑っただろ!?」




「‥‥‥‥さぁな。」


「くっそー今に見てろよ。お前のことなんか、すーぐに追い越してやるんだからな!」



「ほぅ‥‥‥そうか。」


「な、なんだよ。なに笑ってんだよ!?」



──‥なんだろうな。




この感覚。


この気持ちは。





自然と笑みが溢れてしまったぐらい






気分が、いい。




「いや?私を追い越すということはザックスも耳に入れるのだろうな。と思ってな」



「「??」」






「エアリスが子供の頃よく悪さをしては母親に怒られ泣いたことや、お化けが怖くてトイレに行けなかったこと、あぁ。近所の悪ガキを泣かしたこともあったな、確かお漏らしをしていたのは──‥」
「ちょっ、ちょっとストップ!ストップツォン!!」


「なんだよそれ!俺知らねぇ!!」

「知らなくていいの!」


「ずりぃ!また2人だけの秘密か!?」


「あぁ確かにそれはズルイかもな。どうするエアリス」

「ダメ!ツォン誰にも言っちゃダメ!!」


「じゃあ、お味噌汁や滑り台の話しもか?」



「??
‥‥────!それもダメ!なんでそんなの覚えてるの!?」


「なんだよ“お味噌汁”と“滑り台”って!?」



「あぁ。昔な…」


「ツォン!他の人に言ったらダメ!内緒にして。お願い。」


「内緒!?俺もダメなのか!?」


「‥‥うん。」


「だそうだ。残念だったな。」


「ツォンお前わざとだな!?」

「何がだ?私たちの内緒の話しか?」
















───‥嗚呼、そうだ。







「ほらみろ!わざとだ!」




───この感覚。



「ふっ‥。」




───この気持ちは…



「エアリス俺ともなんか“内緒”作ろうぜ。」







「今は、イヤ。」


「そんな〜…」









「残念だったな。」
















────優越感だ。






子供じみた優越感。




そんな私を子犬が恨めしそうに見ているが、













たまには良いだろう?













いつもは私が感じているのだからな。
















───‥劣等感を









私はお前のように隣に居ることは出来ない。






隣で笑い合うなど無理な話なのだ。







ならば…





「どうしたザックス。その眼は私の勝ち。ということで良いのか?」



「良いわけないだろ!」



「エアリスに関してぜってぇ負けないの!特にツォン!アンタにはな。」





「ふっ。そうか。」





───昔の思い出でぐらい




私の勝ちでも。







どうせ無理なんだ。






「勝てないさ、誰も…」



「ん?なんだって?」




「いや?なにも」




昔から彼女を見てきたのだ。





「では、私はそろそろ戻ろう。」


「帰れ帰れ。」


「またな。エアリス」




「うん。‥‥‥えっと、ツォン」


「安心しろ。誰にも言わないさ、なぁ?ザックス」



「早く帰れ!」



そう。



昔から見てきたのに、
















初めてだった。











エアリスがあんな風に笑うのだと知ったのは。





残念だが…








──‥お前のお陰だな。







なのに



どうせなら、
そのまま誰の手も届かないところまで彼女を連れ去ってほしい







そう思うのは、











やはり私が昔から彼女を見てきたからなのかもしれない。













『結局、願うはキミの幸せ‥』










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あおさん!相互ありがとうございます>▽<!!期待に添えられる内容に出来たか自信はないですが精一杯の愛情を詰めこませていただきました!

2011 01 31


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