───エアリスに会いたい…
会ってどうするわけでもないけど…
会って、そばにいたい
声が聞きたいのか…?
いや、ただ会いたい
エアリスに会いたい…。
ただ、会いたい。
『よかった』
この扉こんなに重かったけ…
いつもの教会の扉は今日はやけに重たくって、開かない扉に力を少しずつ加えても全く開く気がしなくて
全体重をかけて、やっとの思いで重たい扉を開けた。
ようやく入れた教会の中はいつもと違ってなんか
寒そうに見えた…。
天井からは優しい光が差し込み花も輝いて見えるのに
何故だか俺の眼には寒そうに映って
あの花畑までの距離がいつもの倍ぐらいに感じた。
───…「おかえりなさい。ザックス」
俺が入ってきた時に少し小走りだったエアリスの足は俺のいつもと違う雰囲気を感じたのか、途中からゆっくりとした静かな歩みに変わっていて
俺の数歩ばかり手前で止まり静かに話しかける。
「‥‥‥ん。」
それだけで、精一杯だった。
それ以上は、いらないものまで俺の口から溢れだしそうで怖くて開くことが出来なかった。
「‥‥‥‥。」
「‥‥‥。」
────静かだ。
静かすぎて耳の奥がうるさい。
落ち着かない。
ざわざわする……
俺は、何しに来たんだ
顔を見に来たハズなのに…
エアリスから眼を逸らしてる…。
「‥‥‥。」
「ねえ、ザックス。上の町に行ったら、空近いんだよね。恐いけど、お花たち喜ぶ、かな。」
俺はいつの間にか、しゃがみこんでいたらしく
エアリスに抱きしめられて初めて俺は、自分の肩の震えに気がついた。
いつから泣いていたのか分からない…
教会に来る前から泣いていたのか
教会に来てから泣いたのか
エアリスの顔を見て泣いたのか
声を聞いて泣いたのか…
男が女の子の前で泣くなんて
カッコ悪い…
情けない…
俺はこんな姿をエアリスに見せるために来たのか…?
「う…っ…うぅ……うっ…」
「‥‥‥。」
エアリスがすり寄せた頬がたまたま俺の左頬に触れた…。
「……うぅっ!」
俺は───
──‥無力だ。
まだまだ、全然、弱い。
なんでも出来る気がしてたんだ。
なんだって守れる気になってたんだ。
俺はまだまだ全然ガキだったんだ…。
気がついたらエアリスの回された腕を俺は強く握りしめていて
エアリスが応えるように腕に力をいれ
さっきよりも強く抱きしめてくれて
その命が俺の身体に、沁みた。
エアリスは──‥
───温かい。
あったかい。
アンジールは───‥
───‥冷たかった。
冷たく、なった。
「うっ‥‥うぅ。」
今日、友達が死んだ。
大切な
大切な友達が死んだ。
──‥死なせた。
あったかかった友達の温もり
俺の好きだった温もりを
俺が奪った。
あったかかった友達は冷たくなり、俺の手には確かな冷たさだけが届いた。
エアリスは、温かい。
あったかいんだ。
きっと俺は、誰かと‥君と触れて
俺に温かさを教えてほしかったんだ…。
そばにいて、人の温かさを
確かな温もりを…。
感じたかった。
よかった。
エアリスが居てくれてよかった。
声が聞けてよかった。
傍に居てくれてよかった。
触れてくれてよかった。
抱きしめてくれてよかった。
温かくて、よかった。
まだ
守りたい人が存在(いて)、よかった。
俺は忘れない。
俺はアンタの誇り、忘れない。
絶対に
絶対に、忘れない。
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私なら自宅に帰って一人で泣きます。多分それぐらい絶望してるであろう時にザックスは自宅ではなくエアリスの居る教会へ…。私なりに深読みした結果です。
2011 01 25