前回は失敗だった。





エアリスが花を大切にしてるなんて忘れていた。





ザックスも散々言っていたし、俺自身エアリスに壊れた花売りワゴンを直してあげようとしたんだった。















エアリス、怒ってたな…





やっぱり謝るべきだよなぁ




スッゲー恐い顔してたし…。












はぁ…





失敗したなぁ、俺。


















俺は重い足取りでなんとか教会の前まで来たのだけど…






気が重い。




どんな顔して入ればいいんだ?


いや、最初の一言目は!?




「こんにちは」?

「久しぶり」?

「覚えてる」?





いや〜どれも違う気がするよなぁ




そもそもまだ怒ってるのか?




案外怒ってなかったりさ、もしかしたらもう忘れてたりよ!?












んな訳ないじゃん、俺。

俺が大切なもん壊されたら滅茶苦茶キレるもんな多分






と、とりあえず入って様子見とくか?



そうだよ!様子見よ。様子。ここからチラッと見て怒ってなきゃすんなり入れるんじゃないか!?










怒ってたら…











閉めよう。















って、オイ!





そこで閉めたら俺、一生、二度とこの扉を開けられないだろ!?








じゃあどうするよ!?



















あ!








マスクを被ったソルジャーなんて見分けつかないだろ!?





そうだよ!






あの日のソルジャーと今日のソルジャーは格好の似た別人です。みたいな?






イケる!!





と言うかもうこれしかないだろ!










よ、よし。











一応マスクを深く被って…と





俺は自分でも信じられないぐらいに心臓の鼓動を速く大きく鳴らし、教会の扉に手をかけた。









──キィ…










「………?」



鼓動の速さに息苦しさを覚えながらも扉をゆっくりと開ければ予想に反して中に彼女の姿はなかった。






「……あ、あれ?」

自分の発した声を聞いてなんともまぬけな声だな。と思いつつ声以上にまぬけな顔をして俺は首を伸ばしたりしながらキョロキョロと辺りを見回した。





「エアリス…?」








……応答、なし。





「エアリス、さーん…?」




気配も物音一つ無かった。




どうやら本当に居ないみたいで










ホッとしたような、残念なような






「まったく。さっきの俺のドキドキを返してくれ」などと頭で軽い憎まれ口をたたくぐらいに落ち着いてきた訳だが…









さて、どうするか?






今日は諦めてこのまま帰るか…















いや、このままじゃ俺はこれからも何だかんだ理由をつけて会わないだろうなぁ








つっても何処に居るのか検討も…





うーん。









どうしたものかと思い何となしに辺りを見回した先で俺の眼に留まったものが一つ。








「──‥花、か」






そう言えばあの二人のよく行くデート場は公園だって言ってたな…
















行ってみるか。






目的の場所にエアリスが要るか居ないか分からない。というのがあったからか、意外にも俺の足は軽く、公園へと足早に向かった。










──期待半分。不安半分。








そんな気持ちで着いた公園にエアリスは






やっぱり、居た。






でも、あれ?

















珍しいな。初めて見たよな…?






























───ピンクの服。








俺の位置からじゃ後ろ姿しか見えないけど、ピンクのリボンを着けカゴを持って立っているのは確かにエアリスだ。






俺も忙しくて毎日来ている訳じゃないけど、陰ながら見守り始めてこの数ヶ月。初めてエアリスがピンクの服を着ているのを見た。









何で今まで着てなかったのか?と疑問を覚えるほど、よく似合っていた。








そんなことを考えながら、ぼーっとエアリスを見ていたら彼女がカゴの中身を軽くいじり確認した








どうかしたのか?











って、ヤバッ。こっち来たぞ!?ど、どうする!?







オロオロと慌てながら辺りを見回し隠れられそうな所を探したが









ねぇっ!!?






〜〜〜〜〜…くそっ!


なるようになれ!俺はエアリスを























迎え撃つ!!






そう、正々堂々と男らしく!




正面から…





…………。











えーと………マスクを深く被って、と






やっぱり最初の一言目は無難に「こんにちは」で良いよな…?





俺は最初の一言目まで用意しマスクを深く被り直して顔をあげると意外にもエアリスは近くまで来ていた



慌てて用意した言葉と挙げようとした右手をピクリと動かしたが











エアリスの顔を見た時、







それら全てが死んだ。






用意した言葉が発せられることも、ピクリと動いた右手が挙がることもなく







俺は静かに口を閉じ、腕をぶらりと垂れさげた。












至近距離まで近づいたエアリスの顔…



いや、正確には瞳を見て改めて感じた。






















───‥綺麗な瞳だ。









こんな風に真っ正面から顔を見たのは初めてだっただろうか?





はっ、とする程に綺麗な瞳だった。









そして、
碧の瞳はピンクの服とよく合っていて、より一層、瞳の碧が綺麗さを増して見えた。










ん?───‥碧‥‥?


















…………そ、うか。












……そういうこと、か。







ここまでのゆっくりとし思考は、どうやら現実の時間の中では短い時間の事だったらしく、






エアリスは、やっと俺の横を通り過ぎるか。といところで



未だにスローモーションで見えるエアリスが横を過ぎて行くのを眼で追いかけながら、「あっ。」と言う声と共に気がつけばに彼女の腕を掴んでいた。





「え?………なに…?」







「あ…………いや、その」




えええぇぇぇぇぇっ!!?



俺はこの先どうする気なんだ!?思わず掴んでしまったものの何考えてんだ!?











「あの……離して?」



「あ、わ、悪い。」



「何かご用かしら?」


「えっ?あ、あぁ!そのー…花!花を買いたいんだ!い、いくらかな!?」




相手は花売り。我ながら巧く誤魔化せた思い内心ガッツポーズを決めたのに








「一本1,000ギル。」


「高っ!!」





マジかよ!?しかも状況的に退けないし…





「でも…」







「で、でも…?」




「もうお花。踏まないって約束、出来るなら一本10ギルでいいんだけど?」




「──!?」



「どうする?」



「す、するよ!大切にする!それにあの時は余所見をしていて気づかなかっただけで、ワザとじゃないんだ!事故!あれは不幸な事故な訳で…」




「クスクス。」




「……?」





「やっぱり、あの時の“紫のソルジャー”ね?」






「…………。」



あれ?俺、もしかして








自滅ですか?





「はい。一本で良かった?」

「うん?…ぁあ!一本で大丈夫」



「大切にしてね?」


「ありがとう。あと、その、あの時は悪かった。ごめんなさい」



「聞いたよ?」


「へ?」



「“ごめんなさい”は、あの日、聞いたよ?」





「そ、そっか?まぁでも一応、な。やっぱそれによ、どんな事情にせよ俺が悪かったしさ」









「ふふっ、ありがとう。でも、大丈夫。お花たち丈夫だから」



「そっか」



「うん。じゃあね?紫のソルジャーさん」





「え、あ、おう。」





笑顔で挨拶をしたエアリスは俺の返事を待たずに振り返り教会の方へと歩き出した。



















「な、なぁ!」



「…?」



俺の呼び掛けにエアリスは振り返り止まってくれた。


そして、その先を促すように俺に首を軽く傾けて見せる。







俺はエアリスから買った花を握り直しエアリスに掲げて見せた。


「また買いに来てもいいか!?」






愛の告白をする男女はこんななのだろうか、そんなに長い“間”があったわけではないのに言い終えたからエアリスの返事を待つ間、いやに俺の心臓はドキドキとうるさかった。













「私達ね?」





「え?」





「ミッドガルお花でいっぱい、お財布お金でいっぱい。計画、なんだ」




「……。」





「待ってるね?」







言い終えるとエアリスは最後に笑顔を残し、今度こそ教会の方へと姿を消した。




俺はエアリスが最後に噛み締める様に言った「ミッドガルお花でいっぱい、お財布お金でいっぱい。計画」その言葉が反芻していて



その間、何故かヤケにアイツの顔が頭の中をチラついた。






………。











──‥好きな色は‥‥















「碧、か‥‥。」






失踪から数ヶ月。







俺は、今さらアイツの好きな色と、その理由を知った。










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はい。リンクネタでした(笑)この話の前に「一方通行‥‥?」がある感じです。なるべくカンセルを普通の人として描いていきたいんで、なんか彼情けないですけど、ご愛嬌(´∀`)その中でカンセル良さやカッコイイ事を言ったりやったりさせたいです(・ω・´)


2010 12 16


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