『登山家』






「何が可笑しいんだよ」


少年ぽさの残る一人の一般兵が不満そうに言った。



「あはははは!そりゃあ冗談にもならないぜ?」


「本当本当。ただの馬鹿な笑い話だよな」


「まぁ夢見るのは人の自由だが夢だけにしとけよクラウド」


クラウドと呼ばれた一般兵はまだ頼りない小さな手を強く握りしめた。




「夢なんかじゃない!ザックスは俺の憧れで目標なんだ。」







「まぁお前がザックスさんに憧れる気持ちはわかるぜ?ただ目標ってな〜‥ぷっ」


「やめとけって。お前じゃザックスさんに追いつくのだって世界がひっくり返ったって無理だから」


「あはははは!違いねぇ」





クラウドはなんでこんな奴等に自分の大事な夢を簡単に話してしまったのだろうと後悔し気分の悪い笑い声を聞きながら乱暴に扉を開け部屋をに出た。









(くそっ!そんなの頑張ってみないと分からないじゃないかっ)




クラウドはズンズンと早歩きでトレーニングルームへと向かっていた






すると向こうからクラウドの憧れで目標のザックスが歩いてきたのがわかった。






「ザックス‥」


「おう!クラウドどーした?」



「え?なにが?」


「いや、やけにお怒りな感じで向こうからずっと歩いていたからさ」















(ザックスもバカにするかな。俺の“目標”)




「クラウド?」






(いや、ザックスはしないかもしれない。でも、もしバカにされた時は‥‥)


















(怒りを通りすぎて悲しくなるな…)









「ううん。なんでもないよ」






「クラウド。」



「なに?」





「そういう時はもっと晴れやな顔で言わないとダメだろ」



「どういうこと?」













「なんでお前はそんなに悲しそうな顔してんだ?ってこと」




「クラウドは本当、ウソが下手だな〜」





クラウドの憧れた男は眼を細めながらニコリと笑ってみせた。








その笑顔を一言で表すならば




















“優しさ”だった。





「まーたお前の悪い癖だろ、きっとさ」







「俺の悪い癖って?」



「一人で抱えて考え込む悪い癖。違うか?」








「そう、かもね多分、少し近いかな」



「ほーらな!クラウドのことなら俺はなーんでもお見通しなんだぜ?ほら、お兄さんに言ってみ」



















「…やっぱりイヤだ」


「うを!?クラウド反抗期か?」







「そんなんじゃないけど…わかったよ」



「んで?どーしたんだ?」


















「俺の目標の話をしたんだ。」


「ほうほう。目標って?」
















「俺の目標はザックスだって、そしたら…」



「えっ!?ちょっと待てよ!クラウドの目標って俺!?」





「‥‥‥うん。」





「あはははは!やめとけって!」



















(……ザックスに、までワラワレタ…。)








「やっぱり、そう、だよね」


「そうそう!クラウドならもっと上に行けるって!」


















「……え?上って?」


「上って上だよ。あぁ!高さじゃないぞ?強さの話しな強さの」







「い、いや、無理だよ。ザックスの上だなんて…追いつけるかさえわからないのに…」




「なに言ってんだよ!そんなん頑張ってみないと分からないじゃない」


「!!」






「それに俺は目標なんだろ?目標はやっぱ追い越さなきゃな!」




「……。」



「んで追い越されたときクラウドが“俺のことを目標にしてました”なんて言ってみろ。」











「うん」



「俺が恥かくじゃない」




















「…え?もしかしてさ、それが“やめとけ”って言った理由…?」



「?そーだよ?」





クラウドは肩からガックリとし腕をだらしなく垂らしてブラブラさせた。



「はぁ……。」


「どーした?クラウド」



















「ぷっ」

「ん?」




「あはははは!ははっやっぱりザックスには俺、敵わないよ。」



「なんだ なんだ?」



「うん。やっぱり俺の目標はザックスだ!ザックス・フェアを目標に頑張るよ!」














「そっか。」



ザックスはクラウドがさっきとは別人のようにスッキリとした顔をしていたので詳しくは聞かずに一度だけ両頬を持ち上げて頷いた。






クラウドはただ黙って頷いてくれたザックスの優しさで持てた自信や覚悟で胸を張ってみて改めて感じた。














「やっぱり、高いな」


「うん?」




「いや、なんでもない。じゃあザックス俺、トレーニングルームに行くから」


「あぁ。がんばれよ」


「うん!」





クラウドは軽く、しかしそれでいてしっかりとした足取りでトレーニングルームへと急いだ。








クラウドがさっき胸を張って感じたこと




それは









世界の壁の高さより何より目の前の越えなきゃいけない山の方がずっと高かったこと。








それが嬉しくてクラウドは静かに微笑んだ。
















「お前なら俺よりも強くなれる」そう言って信じてくれてる親友で憧れの男の言葉を嘘にしたくない。








誰に笑われたってもう、俺は迷わずに俺の目標と向き合える。






世界がひっくり返ったって無理ならば





俺が何度でも世界をひっくり返らせてやる!






あの山はきっと世界一大きいのだから。













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ザク+クラでした〜。細かい疑問やツッコミ所はご愛嬌ということで軽〜くスルーしてあげてください(´-ω-`)

2010 11 28


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