──コンコン‥‥。

「エアリオー?」



「ザックネ!?なんで?」



エアリオの驚いた理由。それはココがエアリオの家の二階の窓際だった。


そして



「こんばんわー」



時計は夜の10時をまわっていた。





『願いよ かなえ』






「どうしたんだ?こんな時間に」



「今、仕事終わったの」


「そっか。でも、危ないぞ?」



「だいじょーぶ だいじょーぶ!こういう場所慣れてるから」



そう言ってザックネその場で軽くジャンプして見せた。



「ははっ、器用だな?でも、違うよ。」



ザックネは首を軽く傾けて「何?」と不思議そうに聞いてみた。







「女の子だろ?一人でこんな時間、出歩くの危ないよ」



「エアリオ〜私、一応ソルジャーなんだけど?」


それでもザックネは1人の女の子として見られている事実は嬉しくて反論しながらも顔からは笑みがこぼれている。



「ねぇエアリオ今から外、出れる!?」


「今から?」


「うん!見せたいものがあるの」




「うーん。今、玄関から出て行ったら音。父さんに聞こえて起きるかもよ?」



ザックネはそう言われるのが初めから分かっていたのかエアリオの言葉を気にする様子もなく、ただ黙って微笑みながら片手をエアリオに伸ばした。



「ここは出入口じゃないんだけどな?」

そう言いながらもエアリオは伸ばされた手をしっかりと握った。



「ふふっ。何かこういうの逆だよね」


「ちゃんとエスコート。よろしくな?」


「りょうかーい」

















***












「初めてかも。夜の公園」


「あれ?そうなの?」



2人はいつもの公園に来ていた。


わざわざ仕事帰りの夜遅くに「見せたいものがある」なんていうから、どこか知らないところにでも連れ出されるつもりでいたエアリオは正直少し拍子抜けしていた。



「公園に何かあるのか?」



「うん?ないよ?」


「え?」


「公園にはなにもないよ。」
「じゃあ、見せたいものは?」


「ふっふっふ〜。エアリオちょっとここで待ってて!」

「ここ?」



「うん!いーよって言うまで動いちゃダメだからね」


「わかった。」




エアリオはそう言われて公園の入り口で1人待つことになった。






──なんだろう?




前触れなく、こんな時間に家を訪問。

しかも玄関じゃなくて、窓から。

どこかと思ったらいつもの公園。






うーん。ザックネはやっぱり、予測不可能だなー。










まぁ、空から降ってくるくらいだもんな。





俺の予想なんて追いつくはず、ないか。



チラリとエアリオはザックネの消えた先を見る。



──時間かかってるけど、ザックネ。大丈夫かな?





心配になりエアリオがザックネの消えた先を見るために首を伸ばしてとき




「エアリオー!いーよ来て来て」



その声を合図にエアリオは少し駆け足で声のする方に向かった。



「お待たせ!」


「大丈夫?」


「へーき へーき手元が暗くて少し時間かかっちゃったけど問題ないわ。」




「何個か一気にやるから見逃さないでね」


「?わかった」




ザックネはエアリオの返事を聞いてからその場にしゃがみ、その状態で素早く何回か移動した後、慌てながらエアリオの横に立った。



「?」


「ほら。エアリオ始まるよ」

















シューー!!

バチバチバチ!
ドン!
バチン!
バリバリバリ!



様々な音をたてながら小さな筒からからキラキラとした色とりどりの光が次々と溢れ出てきた。



「スゴイ!」


「へへっ。どう!?」


「スゴイ綺麗。これ何?」



「花火って言うの」


「はなび?」


「花の火って書いて花火。前にエアリオに約束したでしょ?エアリオの知らない花、見せてあげるって」


「うん。これは俺、知らなかった」



「いい感じかな!?」


「うん。すごく綺麗だ。」





エアリオは次々と出てくる光を夢中になって見ていた。


しかし、それも徐々に勢いを無くし、筒からは煙しか出てこなくなってしまった。



「?終わり?」


「今のはね、あとは」




「はいっ」と言ってザックネはエアリオに手持ち花火を渡した。



「これは?」



「見ててね」



ザックネが「しゃがんでしゃがんで」と言ってエアリオをしゃがませて花火に火をつけた







パチパチッパチ






手元で音をたてながら小さな花がパチパチと咲いた。



「これは?」


「あ!あんまり揺らさないでね。落ちちゃうから」



「え!?」


「それはね、線香花火。今日の主役の花。」


「線香花火?」



「花言葉はね、“大切な出会い”“いつまでも一緒にいられたら”」



「こういうのにも花言葉。あるんだな?」






「ううん。今考えた」



「ザックネー!信じちゃったじゃないか!」


ぽとっ




「あー!ほらエアリオが動かしたから落ちちゃった。」


「……。」




エアリオは今しがた落ちた線香花火を見送ったままに固まった。






「エアリオ。」


「んー?」






「信じてて良いよ。花言葉」




エアリオがザックネを見ると真剣な眼で軽く微笑みこちらを見ていた。そしてその表情のまま




「私は本気だから。」






──不意打ちすぎるだろ。


「本当。予測不能、だな?」


エアリオは照れ臭さを隠すためか、そう一言漏らしてからザックネの頭を軽く撫でて新しい花火を取りに立ち上がった。







「……どっちがよ。」



ザックネは撫でられた頭をおさえながらエアリオには届かないくらい小さな声で言った。

















この出会いよ永遠であれ。










儚く消える線香花火にそっと願った。









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8月に滑り込みセーフ!!
しかし、花火を知らないってどれだけ世間知らずだよエアリオ(汗)まぁ何はともあれ久しぶりにこの2人を描けて楽しかったです。(*´∇`*)

2010 08 31
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