(俺は…また、ココに立っている…。)



俺は世界の平和とか人類の為だなんてそんなことに興味なかった。



それでも俺なりに



生きたい世界


信じてる世界


頑張りたい世界






あったんだ…。


なのに





この世界は俺の望んでいた世界か?






「じゃあさ、守りたかった世界は?」



「え?」




「いや、守りたかった世界はどうなのかな〜?って」





「……ザックス?」



「おう!クラウド!」



俺の背中に憧れた英雄──ザックスが立っている。でも俺はその事実に顔をあげることは出来たが、振り返ることは出来なかった。




「どうしたよ?お悩みか?」



「ザックス…」



「うん?」




ずっと言いたい言葉があった。でもその言葉では俺の蓄積された思いには到底足りなくて、でも、世界に存在する言葉ではその言葉しかなくて


それを音にして発すると、なんて薄っぺらく感じるんだ。



それでも…








「……すまない。」



「何が?」



「俺のせいでアンタとエアリスを……。」





自分のしてしまった罪を償いたいくせに“俺のせいで死なせてしまった”という事実を口にする事を拒む俺は救いようがないと自分でさえ思う。




「別にクラウドのせいじゃないだろ?」




アンタ達ならそう言うって分かってた気がする。でもそんな優しい言葉より






一発殴られた方がスッキリしそうなんだ…。



だからかもしれない。いつまでも“ずるずるずるずる”過去を引き続けるのは






「俺を助けたりしなければ死なずに済んだ。」




「分かんないぜ?もしかしたら全滅だってあり得たかもしれないし、それを考えたらクラウドが生きててくれて良かっただろ?」




「それでも…アンタ達には本当にすまないと思う。」



「クラウド〜。」


「何だ?」




「俺もエアリスもお前の事恨んだことなんかないぜ?」





何かに耐えるように俺は拳を強く握っていた。





「それにそんな逆恨みするぐらいなら最初っから助けたりなんかしないさ!」






憧れた英雄には到底足元にも及べない。







「あ!それより俺もクラウドに言いたいことあったんだよ!」



「俺に言いたいこと?」



「そうそう!」




振り返ることは出来なかったが首だけを少し捻りザックスに聞く意思があることを見せた。






「ありがとな!」





──全く身に覚えがなかった。その言葉に驚き身体が少し動いたがやはり俺の身体は重くそれ以上は動くことはなかった。







「エアリス。」




「エアリス?」




「あぁ。」





「一緒に空を見てくれた。一緒に世界を歩いてくれた。あっ!ゴンガガにも行ったんだろ?それに、新羅から逃がしてくれた。」





「ありがとう」



きっと今振り向けば憧れた英雄のあの格好良い笑顔がそこにはある。



「でもお陰で今大変なんだぜ?エアリスがクラウドに惚れちまったんだよな〜…。」





背中で大きく項垂れているのが手に取るように分かり俺は久し振りに少し笑えた気がした。




「そんなことないだろ?」



「いやいや、エアリス怒ってるんだもん。謝っても“イヤ”って言われた…」




「で?どうしたんだ?」



「ビシッと宣言してやったよ!“もう一度俺に惚れさせてやる”って」



「変わらないなザックスは」











「クラウドは?」



「え……?」




「クラウドは変わったのか?」





「俺は…変わった、んだと、思う。」




「何で?」



「俺は“人形”なんだ。かなり出来損ないの」



俺は人形。


自称“クラス1st”の滑稽な操り人形




「今も人形?」


「……どうだろうな?」



気持ちが入っていないという面ではそうなのかもしれない。



「何で人形?」


「…セフィロスが「セフィロス?」



「あ、あぁ。」



「セフィロスがそう言ったから?」


「……。」



「お前は?クラウドはクラウドを人形って言うのか?クラウドは人形で良いのか?人形で居たいのか?」




「俺は…」




俺は……





「俺は…チ、ガウのが、良い。」



だ…けど…




楽、なんだ。



言い訳にしてる






なにかあっても所詮“人形だから”って




自分を慰めてる気がする







「俺とエアリスが助けたののは人形か?それとも…」





アンタらの前で人形で居るなんて





「イヤだ。俺は…」














「クラウド・ストライフで、いたい」





「守りたかった世界は?」




「守りたかった世界?」



「まだ最初の質問答えてもらってない。」




「クラウド・ストライフの守りたかった世界は何だ?お前が守りたかったもの。何故、力を求めたんだ?」







































「‥‥ティファ」




「お前が守りたかったものは?」





「ティファ。」


「じゃあ、お前が守りたいものは?」

「ティファ。」


「お前は?」






「俺は‥‥クラウド‥ストライフ…。」




「ほら。なーんにも変わってないじゃない!昔も今もクラウドだろ?」



「ザックス…」




「お前はクラウド。昔も今も、今も昔も、これからだって変わらないさ!」







「“クラウド”はお前が決めればいいじゃない」











嗚呼。









どうして憧れた英雄はこんなに眩しくて






こんなにも俺の気持ちをやわらかくするんだろう。






「ただ、ちょっとさ、」




「?」




「今のクラウドは後ろ向き過ぎな。転ぶぞ?」



まぁそれはそうだな。




「この忙しく廻る世界じゃあ前向いてたって転ぶときは転ぶけど、後ろ向いて転ぶと必要以上の怪我する」



「……まぁな」



「それに、大人になるにつれて怪我するのが怖くなるし、怪我のなおりも遅くなる。」






「……。」




「前向けよ。それで守りたいものをしっかり見ろ。」



守りたいもの。




「俺がクラウドの立場だったら絶対にエアリスから眼離さないね!」



「失っちまったもんは戻らないんだ。だから次は失いたくないもんから眼離すなよ!」





俺はいつの間にか緩んでいた拳をまた強く握った。ザックスに返事をするかのように。




「ほら、クラウド前向いてみろよ。」



「前?」




「そうだよ!」



言われるままに俺はいつの間にか下がっていた頭も持ち上げてみた。



「違う違う!」





「違うって?」




「クラウド〜」












「なんだ?」






















「前はこっちだろ?」











嗚呼。だからか…







だから俺は…














振り返れなかったんだ…。









「あぁそうだったな。そっちが前だった。」





「そうそう!」



でも…





「でも、ザックス…俺は……どうしたらいいか…わからない。」






「なんだよー。前にも言っただろ?」















「“がんばれよ”ってな」



じわっと温かく冷たい感覚が身体の中に浸透しながら広がった。



憧れた男の言葉は優しくて温かい。










俺は一つ二つと深く深呼吸をした。向こうを見るのはいつ振りだったか。



そんなことを考えてから、こちら側へのあいさつのつもりだったのだろうか最後に浅く短い呼吸をし、










ゆっくり。いつ止まるかもしれないぐらいの感覚で振り返る。






















「クラウド。久しぶり!」







やはり


俺の前には憧れた英雄のあの格好良い笑顔がそこにあって、英雄の向こうには大きな世界が広がっていた。





「ザックス。」




「クラウド。俺もエアリスもあっちで楽しくやってる。この間なんか久しぶりにデートしたんだぜ?エアリスとは色々と約束もあるしな!」



「例えば?」



「うーん…“男の悩み”だな。」




それ、どこかで聞いたことがあるな……。




「まぁだから俺たちのことは気にするな!──じゃあな。」




「ザックス!」



















気付けば俺はあの丘の上に立っていた。





(まぁ、当たり前か…。)







少しそこからミッドガルを見下ろしてから俺は携帯電話に手を伸ばした。







守りたいものを確認するために。





そして離さないため。俺は久し振りに自分から電話をかける。









「はい。もしもし」

「‥‥ティファか‥?」










『応援歌』






「負けるなとは言わないけど 諦めるなよ。この少し眺めのいい場所からみててやるからさ──。」







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クラウドにはヘタレであってほしいですけど、幸せにもなっていただきたい。んで応援する人物と言ったらやっぱりザッくんかなって思い描いてみたものの当初はザクエア+クラティ的なものを狙っていたのに出来上がってみればただのザク+クラでしたA^_^;

2010 08 21



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