ks01 | ナノ
01.春と眠気と鬼会長
なぜ午後の授業というのはこんなにも眠くなるんだろう。
昼飯を食べた後だから
昼休みで気が緩んだから
この2つの要因が揃っただけでも眠くなるというのに、今は5月。春真っ盛りだ。
教師のつまらなそうな淡々とした声も眠気を煽る。
窓際1番後ろということも相まって、もう限界だった。
春のぽかぽかとした陽気を浴びながら、もう眠ってしまえという悪魔の囁きを必死に無視し続けている。
だがクラスのほとんどの生徒が机に突っ伏しているという状況に心は折れかけていた。
(なんで俺こんなに頑張ってんだろう…)
去年はこの大半の生徒のように眠っていたのに。いや、理由はわかっているのだが。
だけどもう限界だ。
こんな中で平然と起きているやつは化け物だ、と思いながら顔を俯せ下りてくる瞼に抵抗せずにいたら
右肩をトントン、と叩かれて落ちかけだった思考が少し戻る。
俯せたままの顔をそちらに向けると、隣の席にいる双子の兄と目が合った。
「ハレルヤ、大丈夫?」
今にも眠りそうな自分を心配して起こしてくれたのだろう、兄が小声で聞いてくる。まさか隣の席に平然と起きている化け物がいるとは思わなかった。
兄は真面目な性格だが、性格で眠気というのは吹き飛ぶものなんだろうか。それともこの男とってには授業中に眠くなるということ自体がありえないことなのだろうか。
「ハレルヤ?」
返事をしない俺を訝しんで、もう1度名前を呼ばれる。
「ああ、悪いなアレルヤ」
小声でそう返事をして前を向く。前の席で幸せそうに寝ている友人が目に入った。
半ば八つ当たり気味に椅子を蹴り上げてやると、そいつはびくっとしながら飛び起きた。
きょろきょろしているところを見ると自分が何をされたかわかっていないようだ。気付けよ、という意味を込めて「おはよう」と耳打ちしてやった。
「なにすんだよハレルヤ!」
やっと理解したミハエルに叫ばれたが無視する。案の定教師に「うるさいぞ、静かにしろ」と怒られていた。ざまあみろ。
友人はまだこちらを睨んでいる。知るか、寝てるてめぇが悪りーんだよ。
「なんで蹴るんだよ!」と言うミハエルは教師に怒られることを恐れてか小声だ。
「なに言ってんだよ。授業中に居眠りする友達を起こしてやったんだ、感謝しろや」
「蹴るこたねーだろ…」
何を言っても聞かないとわかったのか、ミハエルががっくりとうなだれる。
俺が「ばーか」と言ったのと同時に授業終了のチャイムが鳴った。
教師が出て行ったのと同時に教室内がざわめき始める。
「ハレルヤ、さすがに蹴るのはだめだと思うよ…?」
すかさずアレルヤが注意に入る。まあ予想通りだけどな。
「そうだそうだ、アレルヤもっと言ってやれ!」とミハエルが調子に乗って煽ってきたからとりあえず「うっせーよ黙れ!」と言って頭を叩いておいた。
「ひでえ!暴力反対!!」
ミハエルがぎゃあぎゃあと騒ぐが、無視無視。
アレルヤが咎めるのを笑ってごまかしていると、頭に重みがかかる。
「お前らまた喧嘩してんの?飽きねーなあ」と重みの主から声がかかる。
「喧嘩じゃねーよ。ってか重いんだよどけろ!」
怒鳴ってもそいつはへらへらと笑っている。むかつく。
「いいじゃねえか。いやーちょうどいい肘掛けだわ全く」
「ふっざけんな!ど、け、ろっ、つってんだよおおおライルてめえええ」
必死に肘をどけようとする俺を気にせずライルはより体重をかけてくる。おおお、重い!!
「ライル、そろそろハレルヤをいじめるのはやめてあげてね」
アレルヤが苦笑しながら言うとライルはあっさり肘をどけて「アレルヤに言われちゃ仕方ねえな」と言った。なんでアレルヤの言うことは素直に聞くんだよ!つーか、
「いじめられてねえ!」
とりあえずそこが1番不本意だ。いじめられてなんてねえ!
「そうだぜー?アレルヤ。いじめてるんじゃなくていじってるんだよ。なっハレルヤー?」
にたにたと笑いながら言われたのでとりあえず殴っておくことにした。
「おおいってえ。ちょっとは手加減しろよお前」
ライルが顎をさすりながらぐちぐち言っている。知るか、てめえが悪い。
顔を殴ろうとしたらまあ、俺は座っているし、ライルは立っているし。体にしておけばよかったんだろうけど、顔を殴るという行動をしようとした腕はもう止まらない。
自然の摂理で渾身のアッパーカットをしてしまった俺は、ちょっと、ちょっとだけ罪悪感を感じてはいた。ちょっとだけな。
「そういえば兄さんはまだ寝てんのか。よく寝れるなあ」
ライルが言う。そういえばあいつ何もしゃべってなかったな。見ると、アレルヤの前の席の男は机に突っ伏してぐうぐうと寝息を立てていた。
こいつどんだけ寝てんだよ…。お前も寝ちゃいけない存在だろうが。自然とため息が出た。すぐににやっと笑って
「アレルヤ、アレルヤ。思いっきり椅子蹴ってやれ!」
「えっ、ええ!?だ、だめだよそんなことしたら!」
まあそりゃあそう言うわな。仕方ねえ、俺が起こしてやるか。
一層にやりと笑って立ち上がる俺にミハエルが戦慄く。それほど俺は凶悪な顔をしているんだろう。
ぐっすりと眠っているそいつの机を思いっきり蹴るとその机の主は「うおわっ!?」と叫びながら飛び起きた。
「おはようございますニールさん。よく眠っておられましたねえ?」
とびっきりの笑みで顔を覗き込んでやるとニールは顔をひきつらせて「お、おはようございます」と言って顔をそらせた。逃がしゃしねえよ。
「ニールさん?俺、前に言いましたよねえ?居眠りすんなって。俺がこんなにがんばって起きてたのになんで寝られるんですかねえ?聞いてます?ニールさん」
敬語を使う俺に完全に怯えているのだろう、びくびくとしながら冷や汗をかいている。
「えっと、あの、ご、ごめんなさい」
「謝りゃ済むと思ってんですかねえ?副会長さん?お前今日今までたまってるファイルの整理全部終わるまで帰らせねえからな」
「え、はっ!?」
ニールが驚くのも当たり前だ。あのごっちゃごちゃのファイルの整理なんて誰もしたくない。しかも1冊じゃなく棚いっぱいに入っている。
その上、やらなくても別に支障のないものだ。だから今まで放っておかれたのだから。
「そ、そんな、そりゃあないぜハレルヤ!勘弁してくれ!」
寝てたやつが悪いんだよ。俺はにやりと凶悪な笑みをはりつける
「知るか、会長様の命令は絶対なんだよ」
生徒の代表が居眠りなんて許されない。
俺が決めたことはしっかりと守ってもらうぜ?生徒会役員諸君。
ライハレに萌えすぎてとうとうやってしまいました。
頑張って書きますのでよろしくお願いします!
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