11.募る苛立ち、募る恋慕


「ハレルヤ。ちょっといいか?」

昼休み、飯を食べているときにニールからそう声をかけられた。
その声を掛けられた俺はというと、

「あ?なんだよしね」
「死!?なんか今日酷くねえ!?」

絶賛不機嫌中だった。午前は授業、午後は練習、放課後は生徒会というハードスケジュールに苛々しているからだ。まあそれは他の生徒会連中も同じだけどよ。
でもそんな中での唯一の休息である昼休みを今まさに奪われようとしている状況を逃れようとするのはしょうがないと思う。

「ちょっと話したいことがあるんだって!頼むよ!」

そのあと耳元で小声で「アレルヤのことなんだけどさ」と言われ、俺はしょうがなく立ち上がるとニールを一瞥して屋上へ向かった。






「ああもう!てめえさっさと言いやがれ!なんなんだよ!」

屋上まで来たはいいものの、ニールの野郎、さっきから「あー」やら「うー」やら、やっと「あのさ」までいってもまたどもる。休憩時間を奪われたこともあって苛々がどんどん募っていた。
それでも律儀に待ってやってる俺を褒めてもらいたいものだ。

「あ、あのさ!」

これでまたどもりやがったらまじでころす。

「お、俺、今度の体育祭でアレルヤに告白する!」
「…?お、おう。したらいいじゃねえか」
「あ、ああ」
「……」
「……」

え、まさかこれだけか?もう終わりか?これだけの為に俺は貴重な休み時間を…なんか、すっげえ苛々してきた。

「それでさ、ハレルヤ」
「ああ!?」
「うおっ…何怒ってんだよ」

「てめえのせいだよ!」と叫びたくなるのを抑え、続きを促す。このままじゃマジで昼
休みなくなる!
ニールはまだ少し訝しげな表情をしていたものの、続きを話し始める。

「それで、その、どうしたらいいと思う?」
「…はあ?」

こいつは体育祭に告白するって決めただけで他には全く決めてないっていうのか…。ただの馬鹿なのだろうか。こいつは。

「あー、じゃあ、後夜祭でいいんじゃねえ?」

体育祭のあと、片づけをしてから夜に後夜祭がある。少しの縁日とキャンプファイヤーと最後に花火があって、特にイベント等はなく自由に行動できる。

「生徒会室なら花火も見えるだろうから、お前が先に行っておけよ。何か理由つけてアレルヤを向かわせるから。これでいいだろ。あとは…」
「は、ハレルヤ!お前天才か!」
「お前が考えなしすぎるんだよ。あとはこれから毎日昼と帰りは2人でいられるようにしてやる。朝は難しいかもしれねえけど。こんなもんでいいだろ」
「ああ!ああ!ありがとう!」

こいつ黙ってれば格好良いのになんでこんな残念なんだろうなあ…。
そんなことを思っていると、遠くから予鈴が聞こえてきた。

「や、やべえ!着替えないと!」
「つーかてめえのせいで休憩潰れたじゃねえか!」

2人で慌てながらばたばたと階段を下りていく。

「ご、ごめんって!明日昼飯奢るから!」
「だから明日からはアレルヤとだろうが!」
「あ、そ、そっか」

本当に大丈夫だろうかこいつ…。なんだか不安になる昼休みだった。






練習が終わってから、ふらふらと生徒会室へ向かう。それはニールとライルも同じだった。
点数が高いからってあんなに死ぬ気でやらせやがって…全部の競技に出る俺たちの気持ちも考えろって。
唯一ぴんぴんしているアレルヤに心配されながら生徒会室に入ると、先に来ていた刹那とティエリアがぐったりとソファに身を沈めていた。

「うわっ!刹那にティエリアも大丈夫?」

アレルヤが心配そうに近寄るが2人はほとんど反応を返さない。どれだけハードだったんだよ…。

「ていうかお前ら、邪魔だ。俺たちだって疲れてるんだからソファ独占するんじゃねえって」

ライルがそう言って刹那を押しのけ隣に座る。ニールも同じようにティエリアを起こして座った。

「なんだよお前ら。どうしたんだ?」

ニールが労わるように尋ねると、ティエリアが小さな声で理由を話した。が、

「くっ、…っ!」
「へ、へえ。大変なんだね、ふ、2人とも…っ!」
「ほ、本当だな…っ!ほんとうに、もう、」
「く、そ、そうだな、なんてったって、2人が、ち、チアガール…!っはははは!駄目だもう我慢できねえ!」

我慢できなくなったのは俺だ。必死に抑えようとしたけど、も、もう、無理だって!

「ちょ、やめろよハレルヤ!俺頑張って耐えてたのに!」

俺につられたのか全員が笑い出した。ティエリアは顔を赤くしながら怒っているし、刹那はさっきから微動だにしない。よっぽど堪えたのだろう。精神的に。
だが俺たちも精神的に耐えられない。こいつらとは逆の方で、だけど。
今日は仕事になりそうにないな、と笑いながら心の片隅で思った。






その後どうにかして仕事を終わらせ、帰る頃には校舎もグラウンドも静まり返っていた。
刹那とティエリアはさっさと仕事を終わらせて帰った。完全に不貞腐れたなあいつら。
でもまあ、2人きりにさせるいいチャンスだ。ライルを連れ出すか。

「ライル、ちょっと買うもんあるから付き合え」
「ん?ああいいけど。じゃあ兄さんとアレルヤは先帰っててくれよ」

俺が言おうとしたことをライルが言ったのには驚いたけど、深く考えずにそのまま2人と別れた。






「それで、ハレルヤは何買うんだ?」
「ルーズリーフ。もうねえから」
「嘘つき」
「あ?」
「ルーズリーフ。この前買ってたじゃねえか」

内心で舌打ちをする。こいつが覚えてるはずないと思って高をくくっていたのが間違いだったか。
無言で睨む俺を見てにや、と笑った。なにがおかしいっていうんだ。

「別にいいぜ隠さなくても。ハレルヤが兄さんに協力してるの、わかってるから」

驚きを隠せずに思い切り目を見開くと、ライルはさぞ面白いらしくまたにやにやと笑った。

「兄さんに頼まれたんだろ?アレルヤとの仲を取り持ってほしいって」
「お前は…」
「ん?別に反対はしねえよ。恋愛は自由だしな。兄さんの好きにしたらいいさ」

反対するかと思っていたから、その反応は意外だった。

「ふうん、ライルも結構融通聞くんだな」
「んー?まあ、俺も結構アレな恋してるからなあ」

好きな奴がいるとは前に聞いたけど、もしかしてそれって男なのか?だからニールの恋についても何も言わないのか。

「へえ、まあいいけど。もう帰ろうぜ」
「えー。もうちょっとぶらぶらしようぜ」
「ふざけんな。俺もうくたくたなんだよ。早く寝たい」

とりあえずルーズリーフと適当に飲み物を買ってさっさと帰ることにした。






寮へ向かう途中、俺はライルにもこれに協力させることにした。

「ライル」
「何?」
「これからしばらく、昼と帰りはアレルヤとニール2人にさせるから協力しろ。朝もできるだけ2人にさせたい」
「ふうん、別にいいけど。じゃあしばらくは俺たち2人?」

ライルに尋ねられて初めてわかった。そういえばそうなるのか。

「ああ、まあ、そうなるな。昼はミハエルとかもいるかもしれねえけど」
「ふうん」

ライルが嬉しそうに返事をする意味が俺にはわからなかった。







ニルアレは本当にないと思います^^
あってこんなもんです。告白だけはちゃんと書くつもりです。
私はニールの性格を勘違いしているな。









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