10.始まるまでが楽しいんです


後でスメラギから聞いた話によると、俺を呼び出した3人は謹慎処分を受けているらしい。
寮からも追い出され、自宅待機を余儀なくされていると。まあ、当然の結果というやつだ。
それから生徒総会もほとんど問題なく終わり、6月の終わりになった。
今日から、体育祭の練習が始まる。






放課後、俺たちは第2体育館に来ていた。この学校に体育館は3つあり、第1、第2、第3と名称されているのだ。
体育館の一角にある固まりの後方に座り込む。
俺たちが体育館にいる訳は、縦割りの集会があるからだった。
この学校の体育祭は、縦割りで組を決める。それぞれ同じクラスが同じチームとなり、全部で8つのチームが出来上がる、という寸法だ。
それに最終結果で縦割りの他にもそれぞれの学年1位が選ばれるということもあり、クラス全体の士気が上がるのだ。それは俺のクラスでも例外ではなかった。

「ハレルヤ!ハレルヤは何の競技にでる?」

この馬鹿(ミハエル)を筆頭にライルやクリスたちの士気もぐんぐん上昇中だ。そこまででもない俺にとっては鬱陶しい以外のなにものでもない。

「別になんでもいい」
「テンション低いなー!もっと上げていこうぜ!」
「はいはい」

軽くあしらっていると3年生だと思われる2人が前に出てきた。

「静かにしろ!これから会議を始める!」

威厳たっぷりの言葉に辺りが静まる。

「俺がこのチームのリーダーだ。隣にいるのは応援団長。俺たちが主に指揮を執っていくことになるからよろしく」

なんだかいかにもリーダー、というようなやつだ。体育会系のやる気十分って感じで。あんまり関わりたくはない。
まあ、どこのチームも同じようなもんだろう。だから後ろの方に座ったのだ。

「だが俺1人では全てのことを見てやることはできない。だから、各学年でリーダーを1人決めて欲しい」

それで同じクラスの奴らが全員一斉に俺を見るのはなんでだ。押し付けにもほどがあるだろ!
団長もその様子に気付いたらしい。

「む、このチームには生徒会がいるのか。じゃあ会長にリーダーをやってもらうのが1番いいか?」

もうどうにでもなれ、の精神でぐったりとしている俺の肩を叩いたのは、ミハエルだった。そのままもう片方の手を挙手する。

「あのー!ハレルヤとか生徒会の奴って体育祭の運営で忙しいじゃないですか!だから違う奴がやった方がいいと思うんですけど!ていうか俺がやります!」

おお…ミハエル。俺お前のこと勘違いしてたわ。ただの馬鹿だと思ってたのに!
3くらいだった信頼度が7くらいまでになったわ。まあ100のうちだけど。

「ふむ、ミハエル・トリニティか。他のメンバーがいいなら構わないが」

それに異論を唱える奴はいなかった。元々ミハエルはクラスの人気者だからな。否定する理由がないんだろう。

「はいはーい!ミハ兄がやるならあたしが1年のリーダーしまーっす!」

いきなりきゃぴきゃぴとした女らしい声が聞こえた。見ると、1年生の女子が立って挙手していた。というか、

「ミハ兄?」
「ああ、あいつ、俺の妹!」
「はっ!?」

い、妹!?こいつ妹なんていたのかよ!中学からの付き合いなのに初耳だった。

「ふむ、ネーナ・トリニティか。先と同じく他のメンバーがいいのなら構わない」

それに異論を唱えるやつもなかった。妹も兄同様慕われているらしい。その上の兄も慕われているのだから、こいつらすごいなと普通に感心した。

「リーダーが決まったから学年ごとに話し合い…としたいのだが、これから決めなけれ
ばならないことがある」

それについては、1年生以外は全員がわかっていることだった。
体育祭において、士気を上げるためには必須で点数も高いため自ずと精鋭が集まる競技。

「1年生の諸君はわからないだろうが、まあ聞いておいてくれ。今から決めるのは応援団・騎馬戦・綱取りのメンバーだ」

おお、とあちこちから声が上がる。まあこの3つがこの体育祭の主役とも言える。それだけ点数分配が高いのだ。

「応援団はまず有志を募るので後回しとする。あとは騎馬戦と綱取りだ。騎馬戦は20人、綱取りは15人」
「これやりてーなあ!なあハレルヤ!」
「別に。お前はどっちがやりてえんだよ」
「んー、どっちでもいいんだけど、やっぱり綱取りかなあ」

綱取りとは、読んで字の如く綱を取り合う競技だ。真ん中に2メートルくらいの綱を数本並べ、一斉に取り合う、というものであり、時間内により多くの綱を自陣に運んだ方の勝ちとなる。
ただ、この綱取りはさっきもあったとおりかなり点数の高い競技となるため、全員が本気で挑んでいく。だから相手に引き摺られようが相手を引き摺ろうが手は絶対に離さない。それほどのものなのだ。
だから、この競技に参加できるのは男子だけと決められている。ほとんどの参加者が怪我をするというのに人気のある種目だった。
あと、生徒総会で唯一問題として提唱されたのが綱取りの廃止ということだった。あのときグラハムから渡された書類はこれのことだったのだ。
危険だという理由で一部教師や保護者から廃止願いが出されていたのを生徒総会で議論することになった。結果は、今見てわかるとおり、反対多数で否決になったが。

「まずは綱取りだが…有志も募るがこちらでも指名させてもらう。生徒会の面々に出て
もらいたいのだが、どうだ?」

視線が一斉にこちらに向いた。また俺たちかよ。
代表で俺が答えるべきだろうと思い、立ち上がる。

「いいですけど、アレルヤは外してもらいたいんですが。こいつはこういうやつに向いてない」
「ふむ…そうか。それなら仕方ないな。ではハプティズム弟とディランディ兄弟は出場してくれるんだな?」
「ああ。いいよなお前ら」
「別に構わないぜ」

答えたのはライルだ。ニールもこっちを見て頷いた。

「そうか、それじゃあ後体育の結果がいいのは…」

それから綱取りと騎馬戦のメンバーも淀みなく決まっていった。ミハエルも必死のアピールで両方の参加が決まった。
俺はというと、これまたライルとニールと仲良く両方参加、だ。しかも、

「すごく悪いとは思っている。だが応援団長たってのね要望なんだ。今年が最後なんだ。頼む!」

俺たちは今、リーダーと応援団長に頭を下げられている。上級生に頭を下げられるという状況がやるせない。
理由は、是非俺たちに応援団のメンバーになってもらいたい、というものだった。
俺たち、というのは俺とアレルヤ、ライル、ニールの4人だ。

「僕はいいんですけど、この3人は綱取りにも騎馬戦にも出ますし、生徒会の仕事もありますし…」

アレルヤがやんわりと断ろうとする。この状況で断れるお前はすげえよ。しかも自分のことじゃないのに。だが、

「待て、アレルヤがやるなら俺もやる!」
「えっハレルヤがやるなら俺もやるって!」
「お前らがするなら俺も構わねえさ」

結局全員参加かよ!リーダーも応援団長もすごく喜んでいたが、これだけですごく疲れた。
体育祭の運営に、点数の高い競技に全部参加、そして他の競技にも出場しなければならないだろう。俺たちしぬんじゃねえの。






他の競技は、クラスの奴らの温情により1人1種目だけで済んだ。
ちなみに俺はリレー。1年、2年、3年の順でバトンを繋げていく中の、2年のアンカーになった。負担が多いとか思ったらもう負けだ。
アレルヤは二人三脚、ニールは100m走、ライルは俺と同じリレーだ。
明日から本格的に練習が始まる。午後授業が全て練習に置き換わるのだ。
午前は授業、午後は練習、放課後は生徒会というあまりにもハードなスケジュールに自然とため息が出た。
だが、勝負事には負けたくない負けず嫌いな性格。勝つなら徹底的に勝ちにいくつもりだ。
俺もミハエル並みにテンション上がってんな。とひとりごちながらSHRのために教室へ向かった。







体育祭は高校はだれてたなあ…学校全体的にぐだぐだでした。
綱取りってマイナーだろうか…うちの中学ではあったんですけど。引き摺っていくのは実際にあったので。
綱取りすごく人気あったんですよね!男子だけだったけど!見るのも楽しかったです。
あと騎馬戦は中学高校共になかったので入れてみました。ちょっとやってみたかったなあ。
綱取りの説明下手すぎてすみません。説明するの苦手です^^
応援合戦はどうしようかな!ギャグに持っていくかかなり格好よくするか!
書いててすごく楽しいです!










「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -