分裂ハプティズム


「んん…」

けたたましいアラームの音で目覚める。手で探ってそれを止め、さて二度寝をしようかと布団に潜って、ん?
あれ、何で俺表に出てるんだ?
おい、アレルヤ。そう問いかけても何も返ってこない。それどころか、アレルヤが、いない?
いよいよただ事ではなくなってきた。勢いよく起き上がると手で何かを踏んづけた。ぐに、とやわらかい感触がする。そちらを見ると、何かがいた。

(は?)

布団がもっこりと膨らんでいる。大きさからして、人一人分。
おそるおそる布団を捲ってみると、そこには。

「アレルヤ!?」

心のどこかで予想はしていた、当たってほしくはなかったけど。
そこには、体を丸めてすやすやと眠る主人格がおられた。
あんまりにも安らかな顔をして寝てるもんだから少しむかついて蹴り落としてやった。

「うんっ!?え、な、なに!?」

おはようございます。やっと起きやがったな馬鹿野郎。






「えっ…は、ハレルヤ…!?」
「やっと気付いたか馬鹿」

ようやく事態を把握し目を白黒させているアレルヤにそう言うと、アレルヤは目をきらきらと輝かせた。

「すごい!ハレルヤとこうやって話せる日がくるなんて思ってなかったよ!」

そう言って手を取られると、もう何も言えない。俺だって、お前とこうやって話したかったんだ。
思わず顔を綻ばせると、アレルヤも嬉しそうににっこりと微笑んだ。
そのとき、だ。

「おーいアレルヤ、そろそろ朝食だぜ。起きろよ」

扉の向こうから声が聞こえた。この声は。

「あ、ロックオン。すみません今開けますね」

同じくソレスタルビーイングのメンバーであり、その、まあ、俺の恋人、であるロックオンだ。マイスターの兄貴分であるあいつが来ないメンバーを呼びに来るのはわかる。
っておい、待てアレルヤ、今、開けるって…!

「待てアレルヤ!開けんじゃ…!」

時既に遅し。既にロックを解除された扉は簡単に開かれた。

「おっすアレルヤ。もう朝飯の準備できて、」

ロックオンの声が止まる。今の奴に俺たちはどう映っているんだろうか。

「おい、ロックオ」
「え、アレルヤが2人!?」

まあ、普通の反応か…?とりあえず人の話は最後まで聞け。

「ちげえ!俺はハレルヤだ。何でかわかんねえがこうなっちまったんだ」
「そうなんですよ。何かわかりませんか?ロックオン。…ロックオン?」

アレルヤの声も聞こえちゃいねえ。ぽかんとして俺を凝視している。そんなに見られると居心地が悪いんだが…。

「へ、ハレ、ルヤ?うわ、マジでハレルヤ!?」

今度はいきなり抱きついてきやがった。いってえ!

「ちょ、てめ、いってえんだよ!」
「あ、悪い。嬉しくってつい」

抗議するとあっさりと離された。ははは、と笑うロックオンについ許しそうになってしまうのは惚れた弱みだろう。
アレルヤを見ると苦笑していた。笑ってねえでこのおっさんどうにかしろよ全く。






俺たちが食堂に着いたのはそれから15分後のことだった。
主に迎えにきたロックオンのせいで。

「遅かったな。何か…!?」

お、刹那が驚いてる。これは貴重なものを見ることができた。

「おはようアレルヤ!・・・ってえ!?アレルヤが2人いる!」
「おいおいどうしたんだよこれは」

クリスとラッセも驚いていた。まあ刹那が驚くんだから無理はないか。

「なんだか起きたらこうなってたんだ。こっちは僕じゃなくてハレルヤだよ」
「ハレルヤ!?」
「ハレルヤって、もう1人のアレルヤっていう?」
「え、なになに?どうしたの?」

一体何回説明したらいいのか。それを考えるだけでため息が出た。






「と、いうわけで」

朝食を終えた俺たちはブリーフィングルームに集まった。議題はもちろん、俺たちのことだ。

「アレルヤ、ハレルヤ。貴方たちの昨日の行動を教えてもらえるかしら」
「貴方たち、って言っても俺は昨日1回も表に出てなかったから、アレルヤの行動になるな」
「そう。じゃあアレルヤ。教えてもらえるかしら」

スメラギにそう言われ、アレルヤは昨日の行動をぽつぽつと話し始めた。
昨日は、ミッションがなかったからトレーニングをしばらくして、それからシュミレーションをしていました。
アレルヤが話したのは、いつでもしているようなとりとめのない1日。特に問題はなかった。

「あ、でも」

どうしたものかと嘆息するメンバーが一斉にアレルヤを見た。俺も倣ってアレルヤを見遣る。

「イアンさんが晩御飯を食べた後に飴をくれました。それを舐めながら願い事を思うと、それが叶うって」
「もしかしなくてもそれじゃないか?」

ロックオンの言葉に全員が賛同する。そういえばそんなこともあったな。

「じゃあ、アレルヤが願ったのって」
「あ…はい。ハレルヤと普通に話してみたいって願いました」
「はっ?」

そうか、そうなるのか。急に向いた矛先に戸惑った。
俺は別にそんなこと、どうだっていいのに。俺たちが、お前が生きていたら。
アレルヤが願ったことが、すごく嬉しかったのと同時にすごく恥ずかしくなって、顔が赤くなっていくのを感じた。

「おっ、照れてる」
「な、ば、馬鹿か!照れてねえ!」
「うわあ、照れてる照れてる!かっわいい!」
「そ、それよりイアン捕まえなきゃいけねえだろうが!」

とりあえず話を逸らさないと。それにイアンを捕まえないといけないのも本当だ。これからどうなるのかわからない。

「ああ、それもそうだな。じゃあイアンのところに行くか」
「おお、そうしてくれ…っ!?」

そう言った瞬間、誰かに腕を思いっきり引かれる。
そのままずるずるとブリーフィングルームを後にした。
わかったのは、ラッセの「おい、ロックオン!?」という声で、俺の腕を引いているのがロックオンだということ。






「痛っ…なんだよ!」

そのまま引っ張られロックオンの部屋に押し込まれた。
電気もつけず、薄暗い部屋の壁に背中を押し付けられる。

「なんだよ?だって?わかんねえ?」

いつもとは違うロックオンの表情に体が竦む。少し、怖い。

「…っ、わっかんねえよ」
「へえ、そう」

すっ、っとロックオンが目を細める。いつもとは違う冷たい眼差しにびくりとした。

「ハレルヤは、他の奴らにも簡単にあんなにかわいい顔を見せるんだな」
「は?」

誰がかわいいって?全くわけがわからない。

「おいなんのこと…」
「言わねえとわかんねえって?」

抱き寄せられ、首筋に顔をうずめられる。

「おいやめ、」
「ハレルヤ。ごめんな」

このまま流されてしまうのかと思ったら、ちがう。いつもと違うロックオンの声色で気付いた。

「俺、お前のあんな顔他の奴らに見せたくなくってさ」
「…つまり嫉妬したってか」
「そうだな」

はぁ、とため息をつくと、ロックオンが「怒った?」と聞いていた。

「ばーか。んなわけねえだろ」

左手でぽんぽんとロックオンの頭を叩くと、より強く抱きしめられた。

「ちょ、苦しいって」
「ハレルヤ、好きだ」
「おう、わかってんよ」
「…ハレルヤとこうやって、2人で話してみたかった。ハレルヤに触れてみたかった」
「…おう、俺もだよ。ロックオンさんよ」

恥ずかしい以上に、ロックオンがいとおしく感じた。そうじゃないとこんなこと言えない。

「ハレルヤ、ハレルヤ」
「何だよ」
「好きだよ」
「さっきも言ったじゃねえか」
「好きだ」

ハレルヤは?そう聞かれているような声色だった。でも、こんなこと言えるか。恥ずかしい。
恥ずかしい、けど。

「…俺も」

好きだ。小さく小さく呟いた声は、しっかりと届いていたと思う。






翌日には俺の体は戻っていた。
目が覚めるといつも通りアレルヤの中で、アレルヤに笑顔で挨拶をされる。
部屋から出て、まずロックオンに会った。アレルヤとロックオンが挨拶を交わす。いつも通りだ。
ただ1つ違ったのは、

「おはよう、ハレルヤ」

俺が硬直したのは言うまでもない。アレルヤも同じだったけど、俺より早く硬直を解くと、ふんわりと笑うと体を交代してきた。
表に出る感覚に少し驚いたけど、目の前で微笑むロックオンにぎこちないながらも笑みを返した。

「おはよう、ロックオン」







アレハレ分裂はサイト開設前から考えてたんですけど、ギャグの予定だったんです。
なのに、あれ?なんでこんな甘くなってんの?そもそもこれは甘いの?
よくわからなくなってきました。
それよりやっと原作沿いの話が書けました!
マイスター以外のCBのキャラの口調がわかりませんすみません。
ミレイナはまだわかりやすいんですけどね…








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