ニールの場合


俺とアレルヤが出会ったのは、まずライルとハレルヤからそれぞれ紹介されたときだった。
そのときのアレルヤは、全然今と変わらずいつもにこにこしているようなやつだった。
最初は女みたいな奴だな、と思ったりもしたけど、すぐにそれがアレルヤのいいところなんだということがわかった。
ここから、俺の恋は始まっていた。






ライルがよくハレルヤにちょっかいを出したりするから、俺とアレルヤは自然に一緒にいることが多くなった。
ハレルヤが生徒会に入らされてからは、ハレルヤの帰りが遅くなったりすることが多くなったから余計にアレルヤと一緒にいる時間が増えた。
アレルヤはハレルヤがいないことを寂しがっていたけど、しょうがないことだとわかっているのだろう、何も言わずにいた。
だから、その寂しさが少しでもまぎれるように俺は出来るだけアレルヤと一緒にいた。いや、それを理由にしていただけで、本音はアレルヤと一緒にいたかっただけだ。
でもここまで自分でわかっていても、それが恋心だということはわかってはいなかった。
わかったのは、ある日、4人で出かけたときのこと。






俺とライルが寝坊をしてしまって、アレルヤとハレルヤから先に行っているというメールが来て起きるという痴態っぷり。
慌ててライルを起こして急いで着替えて連絡をとる。アレルヤの携帯にかけたのに出たのはハレルヤだった。

「おっせえ!なにしてんだてめえら!」

怒られたくないが為にアレルヤに電話したのに結局怒られてしまった。まあ会ったら怒られるんだけどな。

「マジで悪かった!お前ら今どこにいるんだ?」

そう言うと、駅の前まで行ってやるから早く来いと言われた。わざわざ駅というわかりやすい場所まで来てくれるのはハレルヤの優しさだろう。なんだかんだいってこいつも優しいんだ。
携帯をポケットにしまい、ライルを急かして走り出す。駅とは言っても、電車で移動した先というわけではなく、学校と目的地の間に駅があるというだけだ。走ればすぐに着く。
駅前まで行くと、なんだか騒がしかった。野次馬がいるのか、人だかりで何がなんだかわからない。
これじゃあ2人を見つけられない。そのとき、

「ハレルヤ!」

確かに、確かにそう聞こえた。騒乱の中心から、まさに今探している人物の声が。
ライルを見ると、ライルも聞こえたのだろう、滅多にない真剣な表情をしていた。
ライルと顔を見合わせ、頷いた後2人で人ごみを掻き分けていく。
やっとの思いで中心までいくと、そこには2組の知らない男女と、殴られたのか尻餅をついているハレルヤと、しゃがんでハレルヤを支えているアレルヤがいた。
1人の男がおもむろに2人に近づく。そしてアレルヤを突き飛ばし、ハレルヤの胸ぐらを掴むと、無理やり立たせた。
それを見たライルが「ハレルヤ!」と叫び走っていってしまった。はあ。もう少し大人の対応をしてやろうと思っていたのに。まあ仕方がないか。
俺もアレルヤの方へといくと、アレルヤはびっくりしたような顔をしていた。なんでびっくりするんだ。待ち合わせしていたじゃないか。

「大丈夫か?」
「うん、僕は。…でもハレルヤが」
「そっちはライルが行ってるから、安心しろ」
「ありがとう」
「いいって。で、何があった?」

アレルヤが言うには、そこにいる女2人に声をかけられたらしい。所謂逆ナンというやつだ。
断っても断ってもしつこく食い下がってくる2人に辟易していると、その彼氏だという2人の男がきて、「俺の女になにしてんだ」と怒鳴られたと。
そしてハレルヤが怒りながら「そっちから声をかけてきた」ということを説明するといきなり殴られたらしい。
…なんかタイミングがよすぎると思う。彼氏が2人でちょうどそこに来るというのは、確率でいうとすごく低い気がする。
考えられるのは、そいつらがアレルヤかハレルヤに恨みを持っていてこうやって恨みを晴らそうとしていること。
本当は2人がナンパについていってからだったのだろうけど、あまりにも頑なだからしょうがなくここでって感じか?
そしてそれは当たりだったらしい。

「だからてめぇのことなんざ覚えてねえって言ってんだろうが!中学時代にボコったやつのことなんか一々覚えちゃいねえよ!」
「なんだと!?てめえ!」

うわ、また喧嘩してんじゃねえか!ライルが止めようとしているが1人で両方止めるのは無理だろう。
そう思い俺も止めるためハレルヤとライルの元へ向かった。
それを見たもう1人の男がにやりと笑ったのに俺は気付けなかった。

「てめえ、俺がどれだけてめえに恥かかされたかわかってんのか!」
「はぁ!?知るかよ!てめぇが弱ぇのが悪いんだろうが!」
「ちょっ、やめろってハレルヤ!」
「ああ!?黙ってろ!」

これで黙ってられるか!落ち着けよ!そう2人でなだめていると、急に後ろから声が聞こえた。

「じゃあ弟くんのしたことはお兄さんに責任とってもらおうか」

振り向くと、もう1人の男がいつの間にかアレルヤのほうへ行き、腕を掴んでいた。
それを見て、俺は、カッと頭に血が上るのを感じた。






いつのまにか俺はその男を殴っていたらしい、ということを昏倒した男とジンジン痛む手から理解した。

「ニール?大丈夫?」

アレルヤに心配されてしまった。助けたのは俺なのに。なんとも情けない。

「ああ。アレルヤこそ大丈夫か?」
「うん、ニールが助けてくれたから」

ありがとう、ニール。

そう言われて、顔が赤くなるのがわかった。と同時に、アレルヤへの恋心を理解した。
人を殴ったことなんて今までなかったのに。アレルヤの為ならなんでもできるんだな俺は。
そうぼんやりと思っていた俺は、ハレルヤの「何やってんだ!殴っちまったんだから逃げるぞ!」という怒号で我に返り、とっさにアレルヤの手を握り走り出した。


end.




お付き合いいただきありがとうございました!
ニールの話は前置きが長すぎた







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